生成AIが新たな課題をもたらす肖像権の実態
特定非営利活動法人 肖像パブリシティ権擁護監視機構が2025年度に行った肖像権及びパブリシティ権に関する実態調査が、生成AIがもたらす影響を鮮やかに浮き彫りにしました。この調査は、SNSにおける肖像・声の無断利用の広がりを見るもので、業界174社からの回答をもとにしています。この調査結果は、生成AIの急速な普及が権利侵害の多様化を促進していることを示しています。
調査背景と目的
近年、生成AIがSNSや様々なプラットフォームで使われるようになり、肖像権及びパブリシティ権の侵害が従来以上に深刻な状況にあります。特に、画像生成AIによる肖像の無断利用や、SNS上における声の無断使用が急増しています。これに伴い、法務省では「肖像、声等の無断利用に関する検討会」が設立され、権利の保護について議論が始まっています。
本調査は、こうした権利侵害の実態を把握し、その経済的損失を可視化するという目的で行われました。
調査方法と結果
調査は2025年4月から2026年3月までの期間にわたり、主にインターネットによるアンケート調査とヒアリング調査が行われました。さらに、削除申請の実証実験も実施しました。調査対象にはTikTok、X(旧Twitter)、YouTubeなどのSNSと画像生成AIプラットフォームが含まれ、状況証拠として侵害疑義事案の投稿が延べ4万件以上、閲覧数は約3.35億回に達しました。
特に注目すべきは、生成AIを利用したモデルの無断作成が続いている点です。調査チームは某俳優の肖像を使ったモデルに対して削除申請を行い、全件100%削除することに成功しました。しかし、削除後にも同様のモデルが新たに出現するなど、監視体制の必要性が浮き彫りになりました。
経済的損失の試算
また、SNS上での肖像権侵害による経済的損失は、約20〜45億円規模に達すると試算されました。この金額は具体的な過去のデータに基づくもので、投稿数と閲覧回数から算出された結果です。数値は保守的であり、実際の経済的影響はそれ以上である可能性があると見られています。さらに、業界全体は侵害に関する認識が不足しており、対応ガイドラインも未設定のものが多く、そのための方策を求める声が高まっています。
業界の反応と今後の展望
調査結果に対して、業界内では「全て把握」や「概ね把握」と答えた事務所が28%にとどまり、完全な把握が難しいという実態が浮き彫りになりました。一方、調査対象の半数近くは肖像権利用の際に事前審査や許諾を求めていることも確認されました。
今後、特定非営利活動法人 肖像パブリシティ権擁護監視機構は声優部会を新設し、声優の権利保護に向けた取り組みも加速させていく方針です。また、関連団体と協力し、業界全体の環境整備を進めていくとしています。
結論
生成AIの普及によって、肖像権やパブリシティ権の侵害が日常的な問題と化しています。この変化に対して、業界全体での認識を高め、適切な対応策を整備することが重要です。本調査の結果は、これからの権利保護の活動に大いに寄与するでしょう。