那須正幹の遺作が絵本として世に出る
株式会社ポプラ社が、絵本『やくそくぼくらはぜったい戦争しない』を2025年2月5日(水)に発売する。この作品は、戦後80年を迎えた日本において、平和のメッセージを伝える重要な一冊として注目されている。
戦争を生き抜いた作者の思い
児童文学作家の那須正幹は1942年に広島で生まれ、3歳のときに原爆を経験した。彼は生涯を通じて、戦争の悲劇と平和の大切さを訴え続け、多くの子どもたちに支持される作品を残してきた。代表作には「ズッコケ三人組」シリーズがあり、気軽に読める物語ながらも深いメッセージ性が多くのファンを魅了してきた。
新作である本書『やくそくぼくらはぜったい戦争しない』は、2013年ごろに広島の被爆70年を前に、那須が書いた『ばあちゃんの詩』を絵本化したものだ。『ばあちゃんの詩』は、広島市東区民文化センターの館長・山本真治氏からの依頼で作られ、当初は歌詞としての採用を意図していたが、物語的な内容が理由で歌にはならなかった。そのため、原稿が埋もれたまま保管されていたが、那須が2021年に亡くなった後に見つかり、このたび絵本として発表されることとなった。
絵本を彩る武田美穂のタッチ
本書のイラストは、名作絵本『となりのせきのますだくん』で知られる武田美穂が手掛けている。彼女と那須による過去の作品『ねんどの神さま』も好評を博しており、二人のコンビは子どもたちにとって親しみやすい作品を生み出してきた。武田の描くイラストは、物語のメッセージを一層際立たせ、子どもたちが戦争について考えるきっかけとなることだろう。
深いテーマを持った物語
物語は、少年と彼の祖母の関係を描いている。ばあちゃんは少年が中学生になるころから「兄ちゃん」と呼ぶようになり、その背景には原爆によって亡くなった肉親への思いがある。少年は、祖母が抱える悲しみを理解し、「ぼくらは、ぜったい戦争しない」と誓う。この物語を通じて、読者は戦争の影響を受けた家族の歴史や平和への思いを感じ取ることができる。
終わりに
『やくそくぼくらはぜったい戦争しない』は、ただの絵本にとどまらず、戦争の悲劇や平和の大切さを学ぶための重要な教材となるだろう。那須正幹の遺作が、未来を担う子どもたちにどのような影響を与えるのか、発売が待たれる。子どもから大人まで、多くの人に読んでほしい一冊である。