90歳の直木賞作家、阿刀田高が贈るひとり暮らしの知恵と楽しみ
直木賞作家の阿刀田高氏が、90歳を迎えた今年、待望の新作エッセイ『90歳、男のひとり暮らし』を9月24日に刊行します。この本は、彼が高齢者としての生活をどのように楽しんでいるのか、また、日々の生活の中で見出した知恵や楽しみを軽妙な文体でまとめたものです。これまでに900篇を超える短編小説を発表してきた阿刀田氏が贈る、彼独自の視点で描かれる老境の生活は、まさに滋味豊かです。
御年90歳、モデルとなる生活の知恵
阿刀田氏は数年前に奥様が介護施設に入居されて以来、自宅でのひとり暮らしを続けています。高齢者としての生活は、家事や趣味、心のあり方など日々の過ごし方において、大きな影響を与えます。モットーは「何事も〝まあまあ”ならそれでいい」とのこと。そんな彼の生き方は、読者にとって多くのヒントを与えてくれるでしょう。
本書では、「老いても楽しい」、「老けることを恐れない」といったテーマが展開され、また、日常の些細な出来事をさりげなく捉えながら、人生の豊かさを伝える内容となっています。たとえば、朝の鏡での顔点検や、手抜きながらも栄養を意識した料理法、そして、通信販売での失敗談など、リアルでユーモアあふれるエピソードが盛り込まれています。
趣味や教養を楽しむ工夫
阿刀田氏は落語を“読む”ことで楽しんだり、眠れぬ夜には源氏物語や百人一首を数えて眠りにつこうとするなど、趣味や教養を重視した生活を送っています。これらのエピソードは、90年間の知恵や経験を集約したもので、読む者にとっても小さな幸福感をもたらすことでしょう。
本書の目次には、日常生活の中での貴重なヒントがちりばめられており、「税金とのつきあい」や「奥歯の痛み ありがとう」といった題材は、ささやかであっても多くの共感を呼び起こすこと間違いありません。
阿刀田高の著者としての歩み
阿刀田高氏は1935年に東京で生まれ、早稲田大学で学んだ後、国立国会図書館で勤務しつつ執筆活動をされてきました。1978年に『冷蔵庫より愛をこめて』でデビューを果たし、その後「来訪者」で日本推理作家協会賞を受賞、さらに短編集『ナポレオン狂』で直木賞を手にしています。近年では文化功労者としても評価されており、長年にわたって日本の文壇で活躍してきました。
そのキャリアは、一般的には言葉と言い回しの洗練さに裏打ちされていますが、本書では高齢者の生活を通じた素直な感情や心の動きが、彼らしいユーモアを交えて語られています。
読みごたえのある一冊
新潮社から発表されるこのエッセイ集は、ただの生活の知恵集ではなく、人生の豊かさを再認識させてくれる一冊です。高齢者の方々だけでなく、すべての世代に向けたメッセージが詰まっており、明日への活力を感じさせてくれるでしょう。
ぜひ、手に取ってその魅力を感じてみてください。