新たな仏教の形を模索
京都で新たな寺院を設立した人類学者、藏本龍介氏は、彼の経験と研究を通じて現代仏教の可能性を探求しています。その成果をまとめた著書『仏教を「経営」する実験寺院のフィールドワーク』が2025年2月25日に発売されました。この本では、彼自身の出家経験から得たインサイトを元に、現代に即した仏教のあり方を提案しています。
著者の背景と目的
藏本氏は、2008年にミャンマーの「森の寺院」で出家し、現地のサンガに参加。そこで仏教の本質やその実践について深く探求しました。彼は、単に知識を得るだけでなく、実際に布施によって生きる姿を体験することで、仏教の新たな可能性を見出したのです。本書は、彼の実践と研究の成果を基に、仏教が現代社会でどのように生き残っていくかという問いを投げかけています。
第一章から第三章への流れ
本書は三つの章から構成されており、それぞれ独自のテーマに沿って展開されています。
ここでは、托鉢中の出家者たちが描かれ、仏教の「律」遵守に挑戦する姿が紹介されています。この章を通じて、布施のみで生活する僧侶たちの実際の生活とその背景が明らかにされます。
この章では、布施を受け取るダバワ長老と、彼の指導のもとで行われる瞑想実践について触れられています。宗教と社会福祉の融合や、善行共同体としての瞑想センターの在り方が探求されています。
寳幢寺本堂での瞑想指導を中心に、新しい寺院の設立に際しての挑戦や、檀家制度から脱却を目指す経営方針について詳述されています。この章では、現代日本に即した仏教の姿が模索されています。
宗教の本質と現代的可能性
藏本が挑戦する現代仏教の形は、単に教義を守るだけでなく、実践を通じた文化的な再生を目指しています。彼は、出家と在家の境界を超えた新たな共同体の形成を志向しており、その試みに多くの示唆が隠されています。
著書の中で、藏本は仏教が今後どのような役割を果たすことができるのか、またどのようにして現代社会にフィットしていくかを問うています。彼の経験に基づいた考察は、多くの読者にとって、仏教の新たな可能性を考えるきっかけとなるはずです。
まとめ
『仏教を「経営」する実験寺院のフィールドワーク』は、現代の仏教が直面する課題とその克服への道筋を示した貴重な一冊です。仏教の持つ変化の可能性を認識し、新たな形の宗教的実践がどのように形成されるのかを考えることは、今後の私たちの生活にも深く関わってくるでしょう。これは、単なる宗教の書ではなく、文化の再生と立ち上がりへの挑戦を描いた記録でもあります。