作詞家生活55周年を祝う松本隆が新たなエッセイを発表
今年、作詞家として55年の節目を迎えた松本隆氏は、記念すべきエッセイ『書きかけの…ことばの岸辺で』を9月19日に発売しました。2100曲以上の楽曲を手がけ、そのうち50曲以上がヒットチャート1位を獲得した彼の功績は、日本の音楽シーンにおいても特筆すべきものと言えます。
松本氏は1975年に太田裕美の「木綿のハンカチーフ」で注目を集めて以来、数々の名曲を生み出してきました。彼の書籍は、朝日新聞の人気連載「書きかけの…」をもとにまとめられ、新たな書き下ろしも加わっています。これにより、彼自身の音楽の旅や思いが紡がれた物語をより深く知ることができるのです。
特に彼のエッセイでは、松田聖子や筒美京平といった昭和の音楽シーンを代表するアーティストたちとのエピソードが語られています。それぞれの名曲の誕生秘話や、制作過程での苦悩、そして感動的な思い出が詰め込まれています。例えば、「赤いスイートピー」の制作時には、松任谷正隆さんの見事なイントロが印象を与えましたが、現代の音楽シーンではイントロが省略されがちであるという変化についても触れています。
また、松本氏は自身の作詞のスタイルについても振り返ります。コロナ禍の影響で「元気になれる曲」を作ることが難しいと感じながらも、KinKi Kidsの新曲「高純度romance」を手がけた背景や、当時の自身の心情を描いています。「人間、がんばれないときはがんばれない」との思いから、励ましではなく癒しをテーマにした作品を追求。こうしたアプローチは、多くの人に共感を呼び起こすことでしょう。
彼はまた、自身が如何に食文化を大切にしているかを語り、それが食事に込められた思いを通じて、彼の作品にも影響を与えていることを示します。「一生の食事回数は限られているから、美味しいものを食べたい」と考えるようになった背景には、彼の独自の価値観があります。
さらに、スランプについても触れ、長年のキャリアを積んできた松本氏だからこそ語れる趣深い見解を提示しています。「脱出するコツはない。試行錯誤を繰り返すしかない」との言葉は、彼自身の内面的な葛藤と向き合う姿勢を反映しています。
このエッセイは、松本氏の音楽に対する情熱と人生を振り返る素晴らしい道のりで構成され、思わず手に取ってみたくなる一冊となっております。今後の作品や活動にもぜひご注目ください。なお、55周年を記念した特別番組やコンサートも予定されており、ファンにとっては嬉しい機会が目白押しです。