「サライ」特集 - 日本美術の魅力を見つめる
大人向けの文化・教養誌『サライ』の創刊35周年を記念した2025年8月8日発売の特大号は、「くらべる ならべる 日本美術」をテーマにした特集が展開されています。特別価格は税込1100円。
この号では、日本絵画の巨頭として知られる伊藤若冲と円山応挙の作品を比較することを通じて、日本美術の真価に迫ります。特集は「奇想と王道」「いきものたち」「浮世絵と西洋絵画」の三つのテーマで構成されており、作品を並べることでそれぞれの画家の異なる視覚体験が味わえます。
若冲と応挙:江戸絵画の巨星の対決
特に注目すべきは若冲と応挙の作品を対比する部分です。両者は江戸時代に活動した有名な画家たちで、「奇想の画家」として名高い若冲は、細密な描写と動的表現が特徴です。一方で、応挙は「王道」の美を追求し、静かな効果を持つ作品で知られています。特集の中では、両者が描いた屏風作品に焦点を当て、筆使いやテーマの解釈の違いを詳細に解説しています。
美術史家の山下裕二さんによる解説では、応挙の静けさと若冲の躍動感を際立たせる着眼点が評価されています。これにより、両者の作品からそれぞれの個性や感性が浮かび上がります。
江戸の「いきものたち」を愛でる
また、江戸時代中期に起きたペットブームにも言及され、犬や猫、小動物たちへの関心が庶民の間で広まった様子が浮世絵を通じて紹介されます。歌川国芳の描く金魚や長谷川等伯の猿猴、さらには将軍家のウサギまで、多様な「いきもの」が登場し、江戸庶民の動物との関わりが伺えます。特集では、作風の違いが魅力でありながら、同時に庶民の生活を反映した作品を並べ、その基盤に迫ります。
浮世絵 vs 西洋絵画
19世紀の「ジャポニスム」、つまり、浮世絵がヨーロッパの画家たちに与えた影響も重要なテーマです。特集では、歌川広重とクロード・モネの名作を比較します。モネは浮世絵の影響を受けて、自然の美を巧みに描きました。特に、彼の作品は柔らかい光の変化を捉えることに成功しており、浮世絵の平面性やデフォルメ技術が影響を与えています。
引き出し付録:若冲と応挙の魅力をより深く理解
今号には特別な引き出し付録も付いており、若冲と応挙の「虎図」と「群獣図」を大画面で紹介しています。双方が本物の虎を見ずに描いた作品を比べることで、毛並みの細やかな表現の違いを実感できます。これらの作品は技術だけでなく、動物への深い愛情を伝えています。
さらなる多彩な特集
さらにこの号では、気軽に楽しむワインに関する特集や、昆虫写真家の海野和雄さんへのインタビューも収録されています。気候変動や新たな造り手が登場する中で、デイリーワインの選び方や、料理に合うワインの楽しみ方が提案されています。自然の美しさを切り取る海野さんの写真や彼の活動も通じて、新しい息吹を感じられる内容となっています。
今号の特集を通じて、日本美術の多様性や深さを再確認しつつ、誰もが楽しめる視点を提供しています。美術ファンだけでなく、広く一般の読者にも響く内容となっています。皆さんも是非手に取って、その魅力を直接感じてみてください。