読書が心身の健康に寄与する共同研究が始動
2025年4月、大日本印刷株式会社(DNP)と鎌倉女子大学は、心身のケアにおける読書の有用性を探求する共同研究を開始することを発表しました。このプロジェクトは、「物語の処方箋ブックリスト」を作成することを目指しており、文学作品等が読者に及ぼす心理的効果を可視化する重要な試みです。
研究の背景と意義
読書は古くから私たちの生活に根付いてきましたが、その心理的な効用や健康への影響を系統的に研究する機会は意外と少なかったと言えるでしょう。特に、物語には他者の感情を体験する力や、共感を生む力があるため、心理的な効果を分かりやすく表現することが求められています。この共同研究は、これらの要素を重視し、読書が生活の質(QOL)向上に寄与する可能性を見出すことを目的としています。
「物語の処方箋ブックリスト」作成のプロセス
DNPと鎌倉女子大学の児童学部子ども心理学科に所属する初澤宣子講師との協力により、本研究は文化活動と心身の健康をつなぐ新たなアプローチを模索します。具体的には、20代と60代の成人を対象に、オンライン調査を通じて文学作品や物語によって引き起こされる感情体験を収集します。このデータを基に、それぞれの作品がもたらす心理的効果を明示した「物語の処方箋ブックリスト」を作成し、社会的処方の一環として活かしていきます。
認知機能とストレス軽減における読書の効果
既に、読書が認知機能の維持や向上、さらにはストレス軽減に効果的であることが多くの研究で示されています。物語文を通じた感情体験は、特に多様な心の動きを引き起こし、読む人にとっての癒しや成長をもたらします。イギリスの事例に見られるように、医師が読書を「処方」する取り組みも進化しており、この研究が進むことで、より多くの人々に読書の健康効果が浸透して行くことが期待されます。
調査の進行と将来の展望
本研究は、2025年4月から2026年9月末までの約1年半にわたり進められます。オンライン調査によって収集されたデータは、図書館員や書店員の評価を受けて、より実践的なブックリストとして提供されることになります。さらなる分析や改訂を行いながら、研究成果を社会に還元し、読書が人々の健康を支える新しいモデルを確立することを目指します。
まとめ
大日本印刷と鎌倉女子大学の連携によるこの研究は、文学の力を再評価し、社会における読書の新たな価値を見出す重要なプロジェクトです。人々の心身の健康を支えるために、読書を活用するための体系的なアプローチを確立していくその希望は、今後の展開に期待を持たせます。