イーユン・リー新作『自然のものはただ育つ』発売間近
アメリカ文学界で著名な作家、イーユン・リーの新作が、ついに日本での出版を迎えます。ノンフィクション作品『自然のものはただ育つ』(原題:Things in Nature Merely Grow)は、20年以上にわたる作家活動の中で得られた深い洞察を凝縮した一冊です。本書は、彼女が失った二人の息子に捧げられたものであり、その内容は多くの人々の心を強く揺さぶるものでしょう。
出版の背景
イーユン・リーは、二人の息子を自死で失った経験をもとに、本作を執筆しました。2017年に亡くなった16歳の長男ヴィンセント、そして2024年に自宅の近くで自ら命を絶った19歳の次男ジェームズ。この痛ましい経験から、著者は自身の苦しみを言葉にし、新たな理解を求めます。
著書の中でリーは、「悲しみとは言葉であり、省略化であり、それは単純化そのものである」と述べています。彼女は過去の悲哀から解放されるのではなく、むしろその深淵を受け入れながら、苦しみと共に生きることを選んでいます。この姿勢は、多くの読者に深い共感を呼び起こすことでしょう。
内容と反響
『自然のものはただ育つ』は、彼女が子どもを失った心情や、感情や思考の違いを表現するために、ノンフィクションの形式で記されています。ジェームズの死後に執筆した長編小説『理由のない場所』とは対照的に、次男ヴィンセントの死に関しては怒りや呆然とした感情ではなく、客観的事実を書き記しています。
本作は、涙を誘う内容でありながらも、深い愛情に裏打ちされたものであり、多くの読者に「奈落の底」で待つ深い思索や感情を届けます。全米図書賞のノンフィクション部門にノミネートされ、各種文学賞にも候補として挙げられており、これからの文学界での評価も高まることが予想されます。
海外の称賛
海外では、「ニューヨーク・タイムズ」によって「他に類を見ない回想録」と評され、「ガーディアン」では「真実の衝撃」と称賛されています。著者の勇気ある姿勢は、「オブザーバー」によって愛の証だと評価され、深く考えないことが悲しみを乗り越える手助けとなると語られています。
著者は、本書が同様の経験をした人々に対して慰めを提供するものではないとしながらも、「自身が書いたものを通じて読者が慰めを見出せるなら、非常に有難い」と述べています。彼女の体験から紡ぎ出される言葉は、失われた人々と共に歩むことができる一歩となるかもしれません。
新刊情報
『自然のものはただ育つ』は、2025年11月18日に株式会社河出書房新社から発売されます。定価は2,640円(税別2,400円)、ISBNは978-4-309-20938-8。これは、彼女の力強い言葉と確かな視点を知る絶好のチャンスです。多くの人々に読まれ、深い感動をもたらすことを期待しています。本書を通じて、悲しみがどのように個々に影響するのか、一緒に考えていきましょう。