江戸時代を舞台としたもののけものをテーマにした本格時代小説が、再びファンの前に現れます。書き下ろし作品『ねこまた狸穴素浪人始末』が、2025年7月9日(水)に光文社文庫から発売されます。この作品は、2019年に発表された短編「ねこまた」の続編であり、読者たちが心待ちにしていた物語の続きが描かれています。
著者は由原かのん氏。彼女は2019年に第99回オール讀物新人賞を受賞し、その後『首ざむらい世にも快奇な江戸物語』で作家デビューを果たしました。もののけものに対する独自の視点と、魅力的なキャラクターたちの生き生きとした描写が特徴です。新作『ねこまた狸穴素浪人始末』でも、その力量が存分に発揮されることでしょう。
本作の主人公、素浪人・猫矢又四郎は、麻布飯倉町の荒物屋の用心棒として生活しています。彼は、ひょんなことから主家の黒猫であるかちんと「猫吸い」によって会話する能力を得ます。物語は、この奇妙なコンビが不穏な事件に巻き込まれていく様子を描きます。
物語の背景には、男女が交合中に襲われるという恐ろしい辻斬り事件が展開されます。その犯人の風体にまつわる噂が、事件の不気味さをさらに引き立てていきます。更には大名家からの招待を受けたかちんと又四郎が、屋敷内で思わぬ発見をすることに。庭の木の刃の跡が示すものとは、一体何なのか。本作の緊張感ある展開に、読者は息を呑むことでしょう。
この物語を執筆するにあたり、著者は視点をあえて混乱させることで、どのような物語が紡がれるのかという興味を持って挑んだといいます。黒猫かちんの視点から広がる物語の世界は、一体どのように読者の心を捉えるのでしょうか。また、著者はこの作品を通じて、作り手の夢を読者と共有できることを心から願っています。
由原かのん氏は、東京都に生まれ、放送大学を卒業後、蕎麦屋を営みながら執筆活動を続けてきました。五十代からの挑戦であり、文学賞にも挑戦し続けた結果、今では注目すべき作家となっています。さらに、福井新聞においては月に一度エッセイを寄稿しており、幅広い活動を見せています。
新作『ねこまた狸穴素浪人始末』は、価額770円(税込)で販売され、提供される文庫版の形で手に取ることができます。Amazonや楽天ブックスでの予約もスタートしていますので、ぜひチェックしてみてください。江戸のもののけ物語に新たな命が吹き込まれたこの作品、続編を待ち望んでいたファンにとって素晴らしい一冊となるでしょう。