新刊『もらいうつ』で知る心の病の新たな側面とその予防法
2023年9月1日、東京女子医科大学の精神科医、髙橋一志氏が新刊『もらいうつ』を方丈社から発売しました。この書籍は、うつ病の患者を支えるあまり、家族や友人、職場の同僚も心身の不調に陥る現象を「もらいうつ」と名づけ、その実態や予防法について詳しく解説しています。
「もらいうつ」とは何か
「もらいうつ」という言葉は、風邪をもらうという日常的な表現に由来しています。そこで表現されるように、うつ病は感染症ではなく、他の人に直接移ることはありません。しかし、うつ病の人に寄り添い続けることで、支える側にも心身の痛みや不調が生じることがあります。著者はそのような現象を「もらいうつ」と定義し、心の距離が近い人々がどのように影響を受けるのかを説明しています。
身近にいる人が影響を受ける理由
本書では、「誰かを支えよう」という思いやりから、結果的に自分が辛くなるケースが多く見られます。例えば、産後のうつ病を抱える妻を支えた夫、うつ病を抱える親に寄り添っていた子供たち、業務を押し付けられた同僚たちなど、全てに共通するのは、思いやりや責任感が強い人たちだということです。
これらの事例では、支えられることで逆に負担が増し、気づいた時には心が疲弊していることも。「もらいうつ」は、同居している家族だけでなく、離れて暮らしている関係者にも影響することが指摘されています。
支える側の無理解な負担
うつ病と診断された人には、医療や休養の支援がありますが、支える側にいる人々には「支えるのが当然」といった思い込みが働き、休息を取ることが難しい実情があります。この結果、精神的な疲労が蓄積し、知らず知らずのうちに自分の健康を損なうことがあります。本書では、こうした見えない負担の側面に光を当てています。
寄り添い方の工夫と具体的な対策
著者は「寄り添いすぎず、離れすぎず」の姿勢が重要だと述べています。一緒に寄り添うことは大切ですが、自分自身の心身の健康を犠牲にしてしまっては本末転倒です。
本書には、「もらいうつ」を防ぐための日常的な対策が具体的に4つ示されています:
1.
自分の特性を理解する - 自分の性格やストレスへの反応を知ることで、無理を重ねずに済む。
2.
セロトニンの分泌を促す生活習慣 - 散歩やストレッチ、入浴を通して心身をリラックスさせる。
3.
ストレスマネジメント - 睡眠や気持ちの整理を心がけ、必要な場合は専門家の助けを借りる。
4.
積極的に食生活を見直す - オメガ3脂肪酸を含む食品など、心の健康を支える栄養素を意識する。
著者は、知識を持つことが自身の防衛手段となると強調し、日常生活で心の健康を保つ方法を多角的に紹介しています。
誰もが助け合うために
支える側の心の健康を保つことは、自分自身のためだけでなく、助けを必要とする人の回復にも繋がります。心の距離を見極め、適切な距離感で寄り添うことで、双方がより良い関係を築いていけることを本書は教えてくれます。
このように『もらいうつ』は、精神的な健康だけでなく、その背後にある人間関係の深さや、その影響についても深く考えさせられる内容となっています。ぜひ手に取って、心の健康を見つめ直すきっかけにしていただきたい一冊です。