絵本『こころのあな』が教える喪失感との向き合い方
2025年4月23日、リンジー・ボニヤ著、ブリジダ・マーグロイラスト、東菜奈訳による新刊絵本『こころのあな』が発売されます。この絵本は、深い悲しみや喪失感に対する理解を促し、心の痛みを癒すグリーフケアの視点が込められています。
物語の概要
絵本の主人公は、弟のマッティーを亡くした男の子。物語の冒頭から、彼は心の中に「穴」が開いたような感覚を抱えています。普段の生活の中で、その穴は常に伴い、日常の中に影を落とします。
「おーい」と、ぼくは穴に向かって声をかけるシーンでは、自身の喪失感を受け入れつつも、その感情に向き合おうとする姿が描かれています。男の子は、やがてこの穴の底に飛び込むことで、自身の心を見つめ直し、喪失感を一歩ずつ克服しようとするのです。
この絵本は、ただ悲しみを描写するだけでなく、その感情に寄り添い、心の痛みを理解する手助けをしてくれます。黒い穴は喪失感の象徴であり、一方でその周囲に存在する明るい黄色の光は、希望や再生の象徴なのかもしれません。
絵とメッセージ
ブリジダ・マーグロによる優しいイラストレーションが、物語の雰囲気を豊かに彩ります。特に、黒い穴と黄色い光の対比は、読む者に深い印象を与えます。明るい光が描かれたページでは、悲しみの中にも生きる力が潜んでいることを示唆しているようです。
さらに、本作には「訳者あとがき」があり、喪失を乗り越えようとする心情が描かれています。「お別れした日が近づいてくると、あなの大きさが変わる」などの表現からは、時間の経過とともに心の痛みと向き合う勇気が感じられます。
グリーフケアの重要性
グリーフケアとは、大切な人を失った際に生じる悲しみや喪失感とどう向き合うかを考える重要な概念です。この絵本を通じて、子どもたち自身がその感情とどう向き合っていくのかを学ぶ手助けになります。絵本が持つメッセージは、ただただ悲しみを受け入れるのではなく、なぜ自分がこのような感情を抱いているのかを考え、少しずつその感情と共存することの大切さを示しています。
本書の楽しみ方
『こころのあな』は、単なる絵本でなく、心の成長を促すための道具です。親子で一緒に読むことで、共に悲しみを分かち合い、理解し合うきっかけにもなるでしょう。また、読み聞かせを通じて、子どもたちが自身の感情を表現するための助けになりました。
最後に
この物語を読むことで、苦しい時期を乗り越えるための手助けや、より良い未来への道筋を見つけることができるかもしれません。心に傷を持つすべての人に捧げられたこの絵本は、希望の光となることを願ってやみません。『こころのあな』は、全国書店やネット書店での購入が可能ですので、ぜひ手に取ってみてください。