新著『自己との対話社会学者、じぶんのAIと戦う』が提起するAI時代の知性
社会学者吉見俊哉の新著『自己との対話社会学者、じぶんのAIと戦う』が、12月17日に集英社新書から発売されます。本書は、急速に発展する生成AIと向き合う中で、人間にとっての存在意義や、学問・教育の重要性を問いかける内容となっています。
吉見氏は、自らの著作や論文をAIに学ばせ、「AI吉見くん」を生み出しました。この人工知能と自身の「もうひとりの自分」として対話を行い、様々な社会学的テーマや現代の問題を探求しています。特に、「人間にしかできないこと」を見つけ出すことが、本書の核心的な目的です。
AIと対話する人間の役割
本書の中で、吉見氏は自らの経験を基に、AIは社会学者になり得るのか、その限界はどこにあるのかについて深く掘り下げています。「ふたりの社会学者」という章では、AIとの対話を通じて、自身のアイデンティティや学問への探究心を再確認しています。彼が探求する内容は、ただの理論にとどまらず、実際の社会現象に基づいています。
教育と大学の未来について
先行き不透明な時代において、大学教育が人口減少にどう立ち向かうのかも本書の重要なテーマです。分水嶺を越えた戦後の大学制度の改革や、近年のグローバル化とデジタル化の進展による影響についても触れます。リカレント教育が果たす役割についての議論もあり、現代の教育システムが抱える危機をリアルに描き出しています。
日本の都市と社会学の視点
さらに、「東京一極集中」というテーマでは、日本の地方と東京との関連、そして東京の持つ幻想性について社会学的視点から分析。特に、1つの大都市が抱える多様な問題が、今後の日本社会にどのような影響を与えるのかを論じる部分は、現在の社会を生きる人々にとって非常に示唆に富んだものです。
未来へのヴィジョン
また、21世紀が抱える課題についても触れ、ドナルド・トランプやグローバリゼーションの反転、成長の限界といったトピックを取り上げ、現在の世界情勢がどのように私たちの未来を形作っていくのかを考察しています。
まとめ
著者の吉見俊哉は、東京大学名誉教授としての豊富な知識と経験をもとに、AI時代に必要とされる知性とは何かを明らかにする試みを行っています。本書は、知識を持つことがどれほど重要であるか、そしてそれをどのように活用していくべきかを考えさせられる一冊です。公での講義やエッセイとは異なり、非常に個人的な視点で描かれた本書は、読者に強いメッセージを伝えます。
吉見俊哉の新作に興味を持った方は、ぜひ発売日を楽しみにしてください。336ページ、定価1,210円(税込)と、手に取りやすい価格設定も魅力です。未来を見据えた深い洞察が詰まった一冊を、ぜひお見逃しなく。