障害児を持つ家族のリアルな声を届ける「共生マガジンincl」
近年、社会は障害児に対する理解を深めているものの、依然として多くの課題が存在します。そんな中、NPO法人サードプレイスが運営するインクルーシブWEBメディア「共生マガジンincl」は、障害のある子どもを育てる当事者家族の声を発信し、社会とのつながりを作る重要な役割を果たしています。
「incl」では、障害を持つ子どもとその家族の周囲にある苦悩や葛藤、希望と決意といった多様な経験を深く掘り下げたインタビュー記事を提供。このメディアの制作チームは、理事長の中西美穂氏をはじめ、脳性まひ児を持つ親の会「NPO法人サードプレイス」のスタッフで構成されています。彼らは、当事者としての視点から、同じような境遇の親たちに寄り添い、リアルな声を届けることを目指しています。
制作の背景と理念
中西氏は「もともと出版社で編集者としての経験があるため、自社メディアを作りたいという思いがありました」と振り返ります。「障害児を持つ家族の置かれた環境を知ってもらうことが重要であり、当事者同士のつながりを深めるピアサポートの役割も果たしたい」と述べ、当事者が当事者のために作るコンテンツの重要性を強調します。
当メディアは、ライティングや撮影、編集、WEB構成に至るまでサードプレイスのスタッフが全てを手がけています。これにより、リアルな体験に基づいた本音を引き出すインタビューが実現されています。中西氏によると、「障害児を育てる親の真の声を、当事者同士のインタビューによって引き出すことで、互いに共感し、支え合うことができる」との思いが強く反映されています。
リアルな声がもたらす力
実際に「incl」を訪れた親御さんからは、「同じ境遇の親御さんの声に勇気づけられました」との感想が寄せられています。障害を持つお子さんの母親、水野ひろみさんも「改めて障害告知された時のことを思い出し、自分が乗り越えてきたことに気づきました」と語ります。このように、自らの経験を話すことで、他の親御さんに希望を与えています。
また、支援者からも高い評価を得ている「incl」。森ノ宮医療大学の助教である勝原勇希氏は、「inclの最大の強みは、その理念が一貫していることです。可視化されない障がい福祉の問題に向き合うため、当事者家族に向けた文書によるピアサポートを提供している点が重要です」と述べています。
未来への期待
「共生マガジンincl」は、現在は助成金を得て運営されているが、将来的には企業や個人の寄付により持続可能なシステムを構築していくことを目指しています。記事を通じて、障害児を持つ家庭の声を発信し続け、社会における意識の向上を目指す取り組みが今後も続くことでしょう。
「共生マガジンincl」は、障害を持つ子どもとその家族のリアルな体験を通して、豊かな社会を作るための架け橋となっています。これからも彼らの努力に注目し、応援していきたいですね。