南アルプスの光岳で生きる女性の物語
大自然の中で生きること、山小屋を管理すること。それがどれほど過酷であり、同時に感動的な体験であるのかを知ることができる作品が、株式会社山と溪谷社から出版されました。2025年5月19日にリリースされた「私、山小屋はじめます」では、主人公である小宮山花(通称:はなちゃん)が南アルプスの光小屋での4年間の奮闘を描いています。
経歴と山小屋への道
32歳の時、東京での仕事を辞めたはなちゃんが選んだのは、南アルプスでの山小屋管理。東京での人間関係に悩み、山の大自然に心を癒しを求めて新たなスタートを切ります。大学卒業後、就職したものの、うまくいかない人間関係で退職。そして心機一転、光岳小屋でのアルバイトを始めるところから物語が始まります。
大自然の中での苦難
光小屋は登山者にとって、南アルプスで名高い皆が訪れる日本百名山の一つですが、アクセスが非常に難しい場所です。登山口からは約9時間半の行程が必要で、2021年に山小屋管理人生活が始まった年には、コロナの影響で営業ができないという試練が待ち受けていました。そのため、開業準備という名の1年間の待機期間が続くことになります。この辛い時期をどう乗り越えたのか、はなちゃんの視点で詳細に描かれています。
営業開始とその後の挑戦
2022年、ようやく営業のスタートを切ったものの、コロナ対策の影響で定員を40人から14人に制限する必要があります。運営の経済性や寝具の変更、新しいメニュー提案など、さまざまな挑戦が続きました。試行錯誤の末、マッサマンカレーを看板メニューとして定め、新たなスタイルが確立されていく過程が、物語を通して描かれます。
楽しさと苦難の入り混じった日々
3年目には、管理人としての貴重な経験が彼女を待ち受けますが、トラブルも少なくありません。特に、自然保護に関する問題に直面し、ルールを守らないグループと対峙するシーンは、責任感と共に自らの道を見つけるというテーマを強調しています。このような出来事を経て、はなちゃんは一人の管理者として成長していきます。
山の魅力と小屋の役割
本書を通じて感じられることは、山自体の素晴らしさと同時に小屋の存在意義です。登山者にとって、山は目的地であり、小屋はその途中の休息の場。登山者たちにとっての思い出として、光小屋での経験がどのように印象に残るかを、はなちゃんは願っています。
単なる仕事以上の意味
最終的に、光小屋はただの宿泊場所以上のものに。登山者たちの心の拠り所となり、「光小屋も良かった」と思ってもらえることが何よりの喜び。はなちゃんの取り組みは、ただの経営者としての挑戦に留まらず、自然との共生という大切なメッセージを伝えています。
この書籍は、はなちゃんの勇気ある挑戦と成長の記録。ぜひ、多くの人に手に取っていただき、山の美しさと人の温かさを感じてほしいと思います。