朝比奈秋、医師の経験を元に描く衝撃作
芥川賞を受賞した作家であり医師でもある朝比奈秋さんが、新作小説『受け手のいない祈り』で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞しました。この作品は、彼の医師としての過酷な経験を背景にしたものです。デビュー以来、彼の作品は次々と話題になり、特に特異な視点で描かれる医療の現場が多くの関心を集めています。
『受け手のいない祈り』は、2024年に第171回芥川賞を受賞した『サンショウウオの四十九日』以来の単行本となります。本作では勤務医としての経験を元に、過酷な医療現場の実情が鋭く描写されており、命を救うという使命の裏で、医師がどれほどの苦しみを抱えているのかが赤裸々に語られています。全国各地で医療体制が崩壊しつつある中、その現実を描くこの小説は、医療を利用するすべての人々にとって必読の一冊です。
著者の朝比奈秋さんは、「あの状況から生きて戻れたのは不思議でならない。この小説は、過酷な医師の勤務から生まれたもので、多くの人に読んでいただければ嬉しい」と語ります。彼が描くこの作品は、多くの医師の叫びを代弁するものとなっており、心に刺さるものがあります。
物語の主人公である青年医師・公河(きみかわ)は、近隣の病院の産科医だった医大時代の同期が過労死したことを知ります。感傷に浸る間もなく、彼の病院には次々と救急患者が運ばれてきます。医療現場は新型感染症の影響を受け、逼迫した状況に置かれ、近隣の病院は夜間救急から撤退する状況となります。公河たちの病院が最後の希望となり、彼らは徹夜勤務や過酷な連続勤務に追い込まれていきます。
この状況下で公河たちは、命を救うことに必死になっている一方、自らは地獄のような労働環境から逃れられない葛藤を抱えます。患者たちの命を救っても自分たちにはその余裕がない、という現実が彼らの心を蝕んでいくのです。この苦しみの中で、「我々の命だけは見捨てられるのか」といった問いかけが、物語の中で何度も繰り返されます。
『受け手のいない祈り』には、医療従事者が経験した類まれな真実が描かれています。この作品を通じて、医師という職業の厳しさや、命を救うことの重圧がどれほど過酷であるかを知ることができます。
著者紹介
朝比奈秋(あさひな・あき)さんは1981年に京都府で生まれ、現在も医師として勤務する傍ら、小説を執筆しています。2021年には「塩の道」で林芙美子文学賞を受賞し、デビューを果たしました。その後も『植物少女』や『あなたの燃える左手で』など多くの賞を受賞しています。
書籍データ
- - タイトル: 受け手のいない祈り
- - 著者名: 朝比奈秋
- - 発売日: 2025年3月26日
- - 定価: 2090円(税込)
- - ISBN: 978-4-10-355732-6
- - URL: 新潮社
この新作は、今後の医療問題について考える上でも重要なテキストとなることでしょう。朝比奈秋の視点から描かれるこの物語は、読者にとって様々な感情を喚起するものです。