平松洋子の新たな挑戦
著者の平松洋子が放つ新刊『筋肉と脂肪身体の声をきく』は、彼女の長年の食をテーマとした探求の成果であり、新たな領域への挑戦でもあります。これまで『おいしい日常』や『サンドウィッチは銀座で』といったエッセイで、食の魅力を余すところなく伝えてきた平松洋子さん。今回の書籍では、「筋肉」「運動」「食事」という3つのテーマに焦点を当て、これらがどのように相互に影響し合うのかを深く掘り下げています。
身体と向き合う旅
本書は、平松さんの発想から始まります。「もし自分がスポーツが得意だったら、人生は違っていただろうか?」という問いかけから、自分の身体を理解し、コントロールすることがいかに重要かを考察しています。アスリートの身体に迫る取材を通じて、力士やプロレスラー、陸上選手、そして彼らを支える栄養士や開発者たちの経験が綴られています。
アスリートに対するインタビューや深い対話が、単なる食事や運動の方法に留まらず、身体の本質に対する理解を深める内容となっています。平松さんは彼らの言葉を通じて、何をどう食べ、どれくらい動くことが理想的な身体作りを助けるのかを学びます。
身体作りの奥深さ
取材を進める中で登場するのは、押尾川親方です。「たくさん食べるのがしんどかった」という彼の声には、相撲というスポーツ特有の背景が見え隠れします。力士は筋肉と脂肪を効率的に溜め込む必要があり、そのためには適切な食事が不可欠です。また、棚橋弘至選手も登場し、食材の選び方やその理由について語ります。彼は「皮や脂肪を一緒に食べると余分な練習が必要になるから、効率が悪い」と語り、理想の身体のためには何を重視すべきかを示しています。
健康と筋肉の価値
また、桑原弘樹氏のインタビューも印象的です。彼は白血病を克服し、38歳でトレーニングを始めます。年月が経つ中で身体は変化しても、筋肉はお金では手に入れられない価値があると主張。彼は、「現代社会ではお金が万能に近いが、筋肉はそれとは異なる価値を持つ」という鋭い言葉を投げかけます。
総括と今後
本書の巻末には、取材した28名の近況や平松さん自身の文庫版あとがき、さらに谷本道哉さんによる解説が収められています。身体と長く、より良く付き合うための知恵が凝縮されており、多くの読者にとっても大きな助けになるでしょう。
平松洋子が3年以上かけて調査し、執筆した『筋肉と脂肪身体の声をきく』。この書籍は、身体と向き合うことの大切さを教えてくれる一冊です。ぜひ多くの方に手に取っていただきたい作品です。