最新小説『パパたちの肖像』が描く令和パパたちの実像
光文社より8月20日に発売された小説アンソロジー『パパたちの肖像』は、育児に奮闘する現役のパパたちによる心温まる物語の数々をお楽しみいただけます。令和時代において、「イクメン」という言葉が普及し、男性の育休取得率も年々上昇している中で、いかにパパたちが家庭と仕事を両立させているのか、その実情が語られることは少なくなってきています。そんな中、本書は7名のパパ作家が、それぞれの経験とユーモアを交えた心の揺れ動きを描き出しています。
作品紹介:多様なパパの姿
本書には、個性豊かな7つの物語が収められています。一つひとつの物語は、共感を呼ぶこと間違いなしのテーマを扱っています。例えば、外山薫さんの「ダディトラック」では、妻の出世により自らの立場が変わり、PTA活動に苦しむパパの内面が描かれています。関係の変化に対する葛藤がリアルに表現されています。
行成薫さんの作品「俺の乳首からおっぱいは出ない」では、授乳を手伝いたいと願う夫の葛藤と、妻の負担を気遣う姿が微笑ましくも切ないです。こうした繊細な感情の動きが、読者の心を揺さぶります。
岩井圭也さんの「連絡帳の父」では、過去の記憶と向き合い、父親の存在を再確認する物語が展開されます。自身の育児体験と家族の歴史が交錯し、深い感慨を抱かせる一作です。
似鳥鶏さんの「世界で一番ありふれた消失」では、お子さんのトミカが失われるシンプルながら共感を呼ぶ状況が描かれており、ミステリーとしても楽しめる要素があります。子育てに戸惑う感情が巧みに表現されています。
また、石持浅海さんの「息子の進学」では、アパート探しの旅を通して父子の絆が深まる様子が描かれ、感動的な成長の瞬間が描写されています。
独特な視点とユーモア
河邉徹さんの「髪を結ぶ」は、娘の髪を結べないという不器用さから来る自信のなさが描かれ、読者を思わず応援したくなるストーリーが展開されています。一方、カツセマサヒコさんの「そういう家族がそこにある」では、共働きによる家庭のハードさに直面するパパの内面が描かれ、社会的なテーマも浮き彫りにしています。
読者の支持も高い
本書は、パパ書評家やママ雑誌編集長からの高評価を受けており、現代の育児における新たなロールモデルとしての意義が認められています。「親世代の価値観は通用しないと言われるようになった社会で、親になった子どもたち。心を痛めながらも頑張る姿が描かれています」といった書評も寄せられ、内容の充実度を裏付けています。
座談会でさらに深掘り
さらに、8月22日発売の「小説宝石9月号」では、岩井圭也さんらによるパパ作家座談会も掲載され、彼らの心の内情をより深く理解するための貴重なインタビューが展開されます。令和のパパたちがどう育児と向き合い、どのように感じているのかが赤裸々に語られることでしょう。
このように、『パパたちの肖像』は、現役パパたちの奮闘と葛藤、そして喜びを多面的に描いたアンソロジーであり、ぜひ多くの読者に手に取っていただきたい作品です。未来の家族像を考える上でも、参考になる作品集となることでしょう。