新世代の労働の実情を描く坂本湾のデビュー作『BOXBOXBOXBOX』

新時代の労働を暴く作品が登場！

2025年11月17日、河出書房新社から坂本湾によるデビュー作『BOXBOXBOXBOX』が発売されます。この作品は、第62回文藝賞を受賞し、注目の一冊となっています。リリースに先立ち、坂本湾という新鋭の作家が描く労働の実態とその背後に潜む衝撃を深掘りしてみましょう。

作品の概要とテーマ

『BOXBOXBOXBOX』は、ベルトコンベアを舞台にした労働者たちの日常を描くベルトコンベア・サスペンスです。主人公の安は、薄霧に包まれた宅配所で、仕分け作業に従事しています。彼は、一日中同じ作業を繰り返し、誰とも言葉を交わさずに毎日をやり過ごしています。出てくる無数の箱の中身を妄想することで単調さを和らげていましたが、やがてその欲望が彼を蝕んでいきます。

ある日、彼は禁断の箱を覗き見ることに成功し、その瞬間から箱が次々と消えていく不気味な現象が始まります。この禁忌の衝動が、彼自身をどのように変えていくのか、そこには新時代の労働の実情が鋭く描かれています。

受賞の背景と評価

選考委員による選評では、この作品が唯一無二の不気味さを持ち、深い技術と決意のもとで書かれたものであると評価されました。「共感も感情移入もさせず、それでも読ませる力がある」との意見もあり、現実か妄想か境界が曖昧な内容が絶賛されました。

発表された章での描写は、作者の繊細な観察眼と鋭い批評精神が結実したものであることが伝わってきます。委員たちは、ぜひ多くの人々にこの作品を読んでもらい、「箱」というテーマについて考えてみて欲しいと訴えています。