荒井和樹の新刊『能力社会から共同体自治へ』が示す福祉の新常識とは

新たな福祉の形を描く『能力社会から共同体自治へ』

2025年10月10日に発売される荒井和樹氏の最新刊『能力社会から共同体自治へ──競争と排除を乗り越える教育と福祉実践』は、現代の教育や福祉が抱える問題点を鋭く掘り下げています。著者は、全国こども福祉センターの理事長を務める荒井氏。彼は長年にわたり青少年支援に取り組み、「支援する」と「支援される」人々の境界を問い直す姿勢を持っています。

この新刊は、「能力主義」や「分断」をテーマに、誰もが共に生きることのできる社会の実現を目指しています。特に、名古屋駅前での若者向けのアウトリーチ活動や居場所づくり等の事例を通して、支援と被支援の違いをなくし、平等な関係を築く方法を提案します。

銘打たれたキーワードは「来やすい入口」「安心の約束」「ともに決める自治」の3つ。これらは、どんな人でも自分の居場所を見つけ、役割を持つことができるようなコミュニティ形成を目指しています。

また、本書は「第1回未来をつくるこどもまんなかアワード」で最高賞の内閣総理大臣表彰を受けた、実績のある実践を元にしています。教育や福祉の現場での具体的な経験を基に、困難に直面している現場での葛藤を丁寧に描写し、より良い社会を実現するための道筋を示しています。

著者の荒井氏自身が保育士や社会福祉士としての経歴を持ち、児童養護施設での勤務を経て、全国こども福祉センターを設立した背景も、実に信頼性のあるものであることがわかります。

さらに、本書には教育や福祉の専門家たちが寄稿しており、特に東京大学准教授の斎藤幸平氏は「新しい福祉と教育の実践書」として高く評価しています。このことからも、本書が抱える重要なテーマ—教育や福祉における支援と共生のあり方について、考え直すきっかけを提供していることが伺えます。

『能力社会から共同体自治へ』は、教育関係者、福祉専門職、医療従事者、そして市民活動に関心のある人々にとって必携の一冊と言えるでしょう。これを通じて、現代の福祉や支援のあり方に新しい視点を与え、真の共生社会を実現するための第一歩としての可能性を秘めています。

書誌情報

- 書名：『能力社会から共同体自治へ──競争と排除を乗り越える教育と福祉実践』
- 著者：荒井和樹（全国こども福祉センター理事長／愛知文教女子短期大学准教授）
- 出版社：せせらぎ出版
- 発売日：2025年10月10日
- 判型：A5判・232頁
- 定価：1,980円（税込）
- ISBN：978-4-88416-321-1
- 出版社URL：せせらぎ出版

著者プロフィール

荒井和樹（あらい・かずき）
特定非営利活動法人全国こども福祉センターの理事長であり、愛知文教女子短期大学の准教授です。彼は「支援する／される」に分けない非援助的アプローチを提唱し、路上や地域での実践を通して共同体自治の理念を広めています。著書には『子ども・若者が創るアウトリーチ』があり、実践的な知見を多くの人に提供しています。