日本文化は絶滅するのか
大嶋仁著の新作『日本文化は絶滅するのか』が5月19日に新潮新書より発売されました。本書では、日本の精神文化が危機に直面していることが詳しく解説されています。著者は、日本人の特有の思考方法や行動様式が「目に見えない精神文化」としての重要性を持っていると強調し、その衰退が私たちに与える影響について深く掘り下げています。
日本精神文化の核心に迫る本書は、パリやバルセロナ、ブエノスアイレスなどで日本思想史や日本文学史を教えてきた著者の専門知識が反映されています。日本文化の根底にある思想を丁寧に探求し、私たちが直面している現代の課題を浮き彫りにします。
文化の衰退と危機
トランプ政権発足以来、政治や経済の混乱で日常のニュースが溢れています。著者は、政策や経済環境の不安定さの裏で、日本人の精神的な文化が急速に衰退していることを懸念しています。この「目に見えない精神文化」は、私たちの考え方や行動の基盤であり、これが失われてしまうと私たちの生活そのものが脅かされると述べています。
本書では、和辻哲郎や西田幾多郎、レヴィ=ストロース、鈴木大拙などの先人の思想を通じて、日本文化の起源やその構造、そして近代における変容を詳細に説明しています。これらの思想は、日本文化がどのように出発し、どのように発展してきたのかを理解する手助けとなります。
目次紹介
本書は以下の章立てで構成されています:
- - 序章 日本文化はいつ生まれたのか
- - 第一章 日本文化の原点とは何か – 生命主義的な世界観
- - 第二章 日本文化の基本構造とは何か – 並立と共存のバランス志向
- - 第三章 日本文化はどのように歩んできたのか – 土着と外来が並立する国
- - 第四章 近代は日本文化に何をもたらしたか – 「聖なるもの」の破壊
- - 第五章 現代世界は日本文化を崩壊させるか – 普遍主義と「無人時代」の到来
著者は、文化が日常生活に如何に深く根付いているかを考え、この記憶が失われてしまうことのリスクを警告しています。特に、グローバル化の波が日本文化に与える影響には、多くの人が意識していない深刻な側面があると指摘します。
現代社会への提言
著者は、読者に対し自身の内面で日本文化を再認識し、日常生活においてこれを守ることの重要性を訴えています。文化の存続を脅かす現代世界で、私たちは一体何をする必要があるのでしょうか。本書を通じて、それを考えさせられます。
著者プロフィール
大嶋仁は1948年、神奈川県生まれ。東京大学大学院で博士号を取得後、パリ国立東洋言語文化研究所や福岡大学で教鞭を執った名誉教授です。著作には『科学と詩の架橋』や『生きた言語とは何か』など、多数の著書があります。