第37回國華賞受賞者に井上一稔氏
2023年10月11日、株式会社朝日新聞社と國華社は、第37回國華賞の受賞者を発表しました。受賞者には同志社大学教授の井上一稔氏が選ばれ、その受賞対象は「奈良・平安彫刻の文化史的研究」というテーマの著作です。日本の彫刻の歴史に光を当てる井上氏の研究は、仏像に込められた思想を、当時の社会や文化的背景と照らし合わせる形で考察しています。これにより、日本の彫刻史に新たな視点を提供したとして高く評価されています。
一方、國華奨励賞には根津美術館の永田智世氏が「江戸後期における蒔絵表現の諸相」と題した研究で選ばれました。彼の著作は18世紀の工芸作品を探求し、薬学史や文化史などの観点からその意義を考察しています。藩主たちの交流や博物学の隆盛といった社会的背景を背景にした分析は、作品に新たな文脈を与えており、専門家からも関心を集めています。
また、図録賞に輝いたのは神戸市立博物館の中山創太氏です。彼は昭和前期の蒐集家である池長孟氏のコレクションを通じ、彼が残した言葉や自筆文書の翻刻を盛り込んだ有意義な図録を作成しました。これにより、収集家の思考や当時の文化をより具体的に知ることが可能になっており、文化史における価値ある資料ともなっています。
贈呈式は2023年10月23日午後6時から、東京・築地の朝日新聞東京本社新館のレセプションルームで行われる予定です。國華賞は「國華」創刊100周年を記念して1989年に設立され、日本・東洋の美術に関する優れた研究を表彰する重要な賞となっています。今回の選考には上智大学名誉教授の小林宏光氏が委員長として12名の選考委員と共にその重責を担いました。
「國華」という月刊誌は、1889年に岡倉天心らによって創刊された世界最古の美術研究誌とされ、現在でも刊行を続けています。朝日新聞社がその発行を支援し、朝日新聞出版によって販売されているこの雑誌は、日本だけでなく海外においても高い評価を受けています。このように、國華賞とその受賞研究は、日本の美術研究の発展に寄与し続けています。
今回の受賞者たちの業績を通じて、日本の美術の多様性とその深い文化的背景に触れることができる貴重な機会となるでしょう。芸術への視点を広げるためにも、ぜひその業績に注目してみてください。