ダンスの新たな境地を切り開く『PLAY』
2024年パリ・パラリンピックの開会式で、振付・演出の監督として注目を集めているスウェーデン出身の振付家アレクサンダー・エクマン。彼の手がける最新の舞台作品『PLAY』が、ついに日本の新国立劇場で初披露されました。本作は、2017年にパリ・オペラ座ガルニエ宮で初演されたのち、再演を重ね、国内外で高い評価を受け続けています。その新たな挑戦が、東京でようやく見られる機会が到来しました。
本公演は2025年7月25日に初日を迎え、エクマンの独自の視点が光る演出と振付が、皆様を魅了します。初日前夜のゲネプロを取材しましたが、その場面は想像をはるかに超えるものでした。演目は二幕構成で、子供時代の“遊び”と大人になってからの“遊び”との違いを描き出しています。このコンセプトは、現代社会に生きる私たちへの問いかけとして非常に興味深いものです。
幕が開くと、白いパンツにグリーンのトップスを着た男性ダンサーが一人踊り始め、観客を引き込みます。白を基調とした舞台装置の中で、他のダンサーたちも次第にその動きに合わせて踊り出す様子は、とても愛らしくもあり、ユーモラスでもありました。手に持ったマイクを叩きながら音を出すダンサー、その音に呼応して華やかな動きを見せる女性ダンサーたち。夢の中にいるかのような印象を与えるコスチュームも、観客を一層引き込む要因です。
一際目を引くのは、空から降る優雅な緑のボールの雨。エクマンの独創的なセンスが光ります。6万個の緑のプラスチックボールが、ステージを埋め尽くしていく様子は圧巻です。この演出によって、まるで子供の頃に戻ったかのような感覚にさせられ、楽しさが溢れ出します。ダンサーたちは、ボールの中で戯れるようにして自由に踊り、その姿はまさに“PLAY”そのものでした。
第二幕に移ると、舞台の雰囲気は一変します。一見ダークな衣装が登場し、現代社会の厳しさや規範を描き出すかのような構成です。また、ディストピアと呼ばれる幻想的な場面も現れ、観客は圧倒的な美しさに引き込まれます。舞台上と観客席とが一体化し、フィナーレへと向かう様子は、まさに心を一つにする瞬間です。
エクマンと同じスウェーデン出身の音楽家ミカエル・カールソンが手がける音楽も、舞台を一層引き立てています。そのスタイリッシュなサウンドと、アメリカ出身のシンガー・カリスタ・“キャリー”・デイの力強い歌声が絶妙に絡み合い、全体の盛り上がりを生み出します。総勢約50人ものパリ・オペラ座のダンサー、歌手、演奏者たちが一丸となり、“遊ぶ”というテーマについて、観客に問いかける感動的な作品となっています。
この公演の魅力は計り知れません。確かなクオリティを持ちながらも、誰もが楽しむことのできる芸術の真髄がここにあります。ぜひ、あなたもその目で『PLAY』の世界を体験してみてはいかがでしょうか。取材を通じて、芸術の可能性の広がりを痛感することができました。観客として参加することは、ただの観賞ではなく、共に“遊ぶ”という体験そのものなのです。興味がある方は、ぜひチケットをゲットして、舞台の魅力を感じてください。