人間は迷惑をかけながら生きる
「人は一人では生きていけない」——仏教の教えが示す通り、私たちは日々多くの人の助けを借りながら生活しています。この考えを基に、ひとつの重要な命題が導かれます。それは「人間は迷惑をかけながらしか生きられない」というものです。その言葉には、単なる自己犠牲や他者への依存といった意味を超えた、深い意味合いがあります。
迷惑をかけることの意味
迷惑をかけることは決してネガティブなものではありません。「迷惑をかける」という言葉の裏には、「お世話になる」というポジティブな側面が隠れています。私たちは互いに支え合い、助け合うことで人間らしさを保っているのです。迷惑をかけることは、他者とのつながりを感じ、感謝の気持ちを育むことへとつながります。実際、他人によって支えられていると気付くことで、より多くのことに感謝できるようになるのです。
日本的な道徳観との葛藤
一方で、日本人の多くが持つ「人に迷惑をかけてはいけない」という強い道徳観があります。これは悪いことではありませんが、あまりにも厳格に捉えすぎると、私たちは他者との関係を過度に気にし、時には自己を犠牲にすることもあります。この考え方は時に重く、生活が窮屈に感じられる原因となり得ます。
「上手に甘える」生き方
枡野住職は、もっと柔軟に生きることを提唱しています。すなわち「上手に甘える」心を持つことが、人間らしく、楽に生きるための方法だと説いています。頼ることや甘えを大切にし、他者との関係性を受け入れたときに、私たちの心も軽やかになるのです。
受け入れる心
そして、自分自身も迷惑をかけているという意識があれば、他人から何かを受け取ったときにそのことを素直に受け入れることができます。私たちが日常生活の中で感じる困難やストレスは、実はこの「人に迷惑をかけてはいけない」という圧力から来ていることが多いのです。枡野住職が提唱する生き方は、そんな心の負担を和らげるための指針となるでしょう。
著者の背景と新書
枡野俊明住職は、神奈川県出身の僧侶であり作庭デザイナーでもあります。名誉教授としての肩書を持ち、国内外で高く評価されている彼の庭園は、見る者に深い感銘を与えています。そんな彼が新たに著した『かかえこまない練習』の中で、迷惑をかけることの意義について独自の視点で語っています。この書籍では、仏教の教えを通じて、日常生活における心の持ち方や生き方を見つめ直す機会を提供してくれます。
書籍は2025年8月22日に発売予定で、定価は1,958円(税込)です。興味のある方は、ぜひ手に取ってその内容に触れてみてはいかがでしょうか。枡野住職の言葉を通じて、新たな気づきや心の平和を見つけることができるでしょう。