江戸時代の命がけの選択──『闇抜け密命船侍始末』
新潮文庫より8月29日に刊行された仁志耕一郎の新作『闇抜け密命船侍始末』は、江戸時代の下級藩士が背負った苛酷な運命を描いた傑作時代小説です。物語は富山藩の下級藩士・金盛連七郎が、重臣から示された衝撃的な命令に直面するところから始まります。彼が受けた密命とは、法を犯してまで「抜け荷」を引き受けること。その選択には命を懸けた決死の覚悟が求められます。
生命をかけた仕事への道
重臣・寺西左膳は連七郎に、「成功すれば復職の約束がある」という甘い言葉を投げかけますが、その裏には危険が潜んでいることを彼は痛感しながらも、選択肢は他にありません。家族を養うため、日々の生活を支えるため、この道を選ぶしかないのです。連七郎は自らの命を賭けて、江戸から蝦夷・薩摩を経て再び富山へと向かう一大旅路へと足を踏み入れます。
多様な人々との出会い
過酷な旅の中で、彼は侍以外の様々な境遇の人々と出会います。荒くれの船乗り、大商人、そしてアイヌの美しい娘との出会いが、彼の心に何らかの変化をもたらします。それぞれの出会いが連七郎の人生観を変えていく様子が、丁寧に描かれており、彼の成長を追体験することができます。
どんでん返しの復活人生
物語の終盤では、不測の事態が連七郎を襲い、彼の運命が大きく変わる瞬間が訪れます。彼が身を投じた決死行の中で織りなされる数々のどんでん返しは、読み手に驚きと感動を与え、最後には心温まる読後感をもたらします。その結末には、彼が经历した厳しい現実が描かれつつも、新たな希望に満ちた未来への道が開かれているのです。
著者・仁志耕一郎の世界
仁志耕一郎は1955年に富山県で生まれ、東京造形大学を卒業後、広告業界でのキャリアを積んでから作家としてデビューしました。彼の作品は、歴史を背景にしたものが多く、いずれも緻密な取材と人間描写に裏打ちされています。特に『闇抜け密命船侍始末』では、江戸時代の歴史的背景や文化を巧みに織り交ぜながら、現代にも通じる普遍的なテーマを描いています。
2025年8月、彼は山梨県に居を構え、新たな視点から物語を紡いでいることでしょう。読者はこの新作を通じて、江戸時代の人々の生き様や、歴史の深さに触れることができるはずです。ぜひ手に取って、その魅力に触れてみてください。
書籍データ
『闇抜け密命船侍始末』は、文庫版で825円(税込)で販売されています。ISBNは978-4-10-104633-4です。詳細な情報は、
新潮社の公式サイトをご覧ください。