八潮市の道路陥没事故をもとに見える日本の水インフラの危機

日本の水インフラが抱える見えない危機

最近、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故が注目を集めています。この事故は、老朽化した下水管が破損したことが原因とされており、私たちの生活を支える水インフラの危機を浮き彫りにしています。この問題は八潮市に限らず、全国どこでも起こり得るものであり、観察者である私たちに大きな警鐘を鳴らしています。

上下水道の現状

上下水道は都市生活の要です。これまで人々を感染症から守り、豊かな暮らしを実現させてきました。しかし、今、私たちの目の前には「静かなる崩壊」が進行しています。過去の成功体験は、今や負の遺産となり果てようとしています。蛇口をひねるその瞬間の下にあるインフラは、見えないところで徐々に劣化しているのです。

水問題の専門家、橋本淳司氏は著書『あなたの街の上下水道が危ない！』の中で、古くなった水道管が現在の水道インフラの状況を脅かしていることについて論じています。実際、国家のデータによると、全国の下水道管の総延長49万kmのうち、2032年には2割が法定耐用年数を超えるとされています。そして2042年には、さらに4割がその耐用年数を超える見込みです。この数字は、私たちが直面する現実を物語っています。

集中豪雨と老朽化の問題

気候変動の影響で、集中豪雨や台風が増加し、下水道への負荷も増しています。そのため、老朽化や腐食が加速的に進んでおり、この問題はさらに深刻化しています。八潮市での陥没事故は、こうした問題がすぐそこで発生する可能性があることを教えてくれる教訓です。私たちの住む地域でも、他人事とは言えないのです。

高騰する水道料金

一方で、既存の水道インフラを維持するための水道料金は日々高騰しています。なぜ、ここまでコストが上がるのでしょうか？水道民営化がその解決策になるのか？橋本氏は、その背景を様々な視点から探ります。本書では、水道民営化のメリットとデメリットを中立的に分析し、私たちにとっての本質的な問題を考える手助けをしています。