不眠と抗いの物語
八木詠美の新作小説『アンチ・グッドモーニング』が、2026年6月29日に書店に登場します。彼女はデビュー作『空芯手帳』で国際的に評価され、また第2作『休館日の彼女たち』でも話題を呼びました。この最新作は、現代社会で苦しむ人々に響く内容となっており、第175回芥川龍之介賞にもノミネートされています。
主人公の苦悩
本作の主人公は、非常に多忙な会社で働く女性会社員・野上です。彼女は、約8か月にわたって不眠に悩まされ、自身の精神状態が徐々に蝕まれていくのを感じています。「眠れるなら死んでもいい」といった言葉が出てくるほど、彼女の心は疲弊しています。この小説は、ポジティブな価値観が支配する現代社会において、彼女がどのように自身の苦悩と向き合うのかを描いています。
野上が勤務する会社では、社員の健康や“ウェルビーイング”が強く推奨されていますが、その一方で厳格な社内ルールが存在します。例えば、チャットは即レスが求められ、常にポジティブな反応が求められています。また、問題解決よりも批判を避けることを重視する風潮も見受けられ、野上は仕事のプレッシャーに苦しむ日々を過ごしています。
悩める日常
家に帰ると、優しい夫が「一緒に不眠を治そう」と食事やリラクゼーションを提案しますが、彼女の不眠は改善されません。さらに、癒しとしてレンタルニワトリの「チャッピー」を借りてきますが、その努力も虚しく、野上はしんどさを一向に解消できないのです。
そんな中、会社のeラーニング動画で出会った講師の出冬覚が、思いもよらぬ契約を持ちかけます。「魂を少しいただければ、あなたを眠れるようにして差し上げましょう」との彼の言葉に、野上は心揺さぶられます。果たして彼女は、その契約を結ぶのか? そして、彼女の苦悩は解決するのか?
読者からの反応
本書に対する書店員たちの反応も注目されており、多くの人々が共感の声を寄せています。「眠れる小説が読みたいわけじゃなく、眠れない私を理解してくれる物語が欲しい」といった感想が寄せられています。また、「眠るために悪魔に魂を売り飛ばしてでも眠りたい」と共鳴する読者も多く、現代社会で闘う人々の思いを代弁する作品として期待されています。
現代の悲哀を描く力作
八木詠美の新作は、現代の「苦悩あるある」を体現しており、ポジティブに包囲されている世の中に対する反発の姿が鮮やかに描かれています。主人公の野上は、不眠という苦しみを通じて、社会の矛盾や自身の心情に抗っていく姿を描くことで、多くの読者に勇気を与えることでしょう。どのようにして彼女が現代社会から脱出を試みるのか、その過程は必見です。
書誌情報
『アンチ・グッドモーニング』は、46判の上製で184ページ。定価は1,870円(本体1,700円)で、ISBNは978-4-309-03275-7です。デジタル版も近日中に発売される予定です。詳細は各電子書籍ストアで確認できます。是非、期待してお待ちください。