本日、2026年5月21日に法政大学の河野有理教授の新著『日本史はいかに物語られてきたか』が新潮選書から刊行されました。この書籍は、歴史におけるさまざまな物語の形を探求し、特に戦後の日本における多様な歴史観の変遷とそれに伴う衰退の過程に焦点を当てています。
戦後日本の歴史観は、大きく「皇国史観」と「マルクス史観」に二分されていましたが、その後の1970年代には多くの知識人たちが、理想の国家像を実現するための自由で革新的な「歴史物語」を大胆に展開しました。これにより、歴史に対する新たな理解が生まれ、多様な視点が競い合う思想空間が形成されたのです。
しかし、21世紀に入るころには、これらの多様な「史論」は次第に影を潜め、歴史からの物語性が失われていくという事態に直面しました。本書では、こうした「歴史の衰退」がいかにして生じたのかを解明することを目指しています。
本書の中には、戦後日本を代表する多くの知識人たちの「歴史物語」が取り上げられています。網野善彦、山本七平、司馬遼太郎、松本清張などの著名な著者が、自らの理想とする国家の姿を歴史に託した様子が描かれており、各人の考え方や視点の違いが歴史にどのような影響を与えたのかが探求されています。特に、各章は著者の代表的な著作を基にしており、それぞれの歴史に対するアプローチを明らかにします。
目次は非常に興味深く、例えば「百田尚樹『日本国紀』にはなぜ史観がないのか」や「坂本多加雄『象徴天皇制度と日本の来歴』が説いた護憲の論理」など、戦後の歴史論争の核心に迫る内容が含まれています。各章を通じて、著者は歴史観の変寸やその背後にある思想的背景を丁寧に解説し、読者に新たな視点を提供します。
また、河野教授はこの書に込めた思いについて、「歴史観が衰退することで、私たちの社会が直面する危機を考え直すきっかけとしたい」と述べています。これがある種の歴史物語の新しい主題を形成し、読者に対して自己の歴史観を見直す機会を提供することでしょう。
このように、河野有理教授の『日本史はいかに物語られてきたか』は、単なる歴史書に留まらず、歴史をどう物語ってきたかという問いを投げかける一冊です。読者にとって、戦後の日本における多様な歴史観を深く考察することができる貴重な資源となるでしょう。歴史ファンや思想に興味がある方々には、ぜひ手に取ってほしい作品です。