新たな挑戦に勇気をくれる児童書『まだまだここから』
2025年5月9日に株式会社ポプラ社から児童向けの新刊『まだまだここから』(作・宇佐美牧子/絵・酒井以)が発売されました。この本のテーマは、「うまくいかなかった努力は本当に無駄なのだろうか?」という問いかけです。教育界でも日常的に語られるレジリエンス、すなわち「失敗から立ち上がる力」をどうやって子どもたちに伝えることができるのか、その重要性を考えさせられる物語がここにあります。
あらすじと登場人物
物語の主人公は小学校4年生の男の子、蓮。彼は運動が得意ではないものの、水泳だけには自信を持っています。そんな蓮に訪れる特訓生になるチャンス。そして迎えた検定の日、彼の努力は実らず、選ばれたのは弟の凛でした。このように初めての「つまずき」を経験した蓮は、自らの頑張りが無駄ではないことに気付いていくことになります。
蓮は市民プールで出会った友達の陽太や海音、さらには家族やコーチとの交流を通じて、自身の成長を実感します。彼の心の葛藤と、再び立ち上がる様子が描かれたストーリーは、どの世代の読者にも響く力強さを持っています。
本書の見どころ
共感を呼ぶ物語
宇佐美牧子さんは、どんな家庭環境に育っている子どもでも自分を重ねて読める、そんな物語を描くことを信念にしています。本書のテーマも、彼女が長年温めてきたものです。子どもたちが初めて経験する挫折や落胆から、再び立ち上がるエネルギーの大切さを、優しく表現しています。失敗が無駄ではなく、新たなスタートに繋がることを教えてくれるような作品です。
夏休みにぴったりの舞台設定
物語の舞台は、主人公の蓮が夏休みを利用して通う市民プールです。この新たな環境での出会いが、彼の成長を促す要因となっています。友人やコーチとの交流を経て、蓮は自己発見の旅を開始し、成長していく姿が描かれています。夏休みの読書としても最適で、子どもたちに読んでほしい作品です。絵を担当した酒井以さんの瑞々しいイラストが、物語に命を吹き込み、楽しみながら学べる印象を与えています。
宇佐美牧子さんのメッセージ
著者の宇佐美牧子さんは、失敗が続くことで気持ちが沈む経験を持ち、その中で成長したことを語っています。子どもの人生はまだ短く、失敗を通じて前に進むことの難しさを理解していますが、同時にその中での再挑戦の大切さを伝えたいと考えています。彼女の言葉には、子どもたちが「まだまだここから」と励まされる力があります。
結論
『まだまだここから』は、子どもたちに自分自身を見つめ直し、立ち上がる勇気を与えてくれる作品です。失敗は決して無駄ではなく、そこから学び成長していくことの価値を教えてくれます。夏休みの読書にぜひ手に取ってもらいたい一冊です。読者が蓮の成長と共に、自分自身の経験を重ね合わせられることでしょう。