『東大なんか入らなきゃよかった』が描く東大卒業生の厳しい現実とは

東大卒業生の知られざる真実

日本の学歴社会の頂点に立つ東京大学。しかし、その名声に隠された真実は、必ずしも華やかではありません。池田渓が新潮文庫から刊行したノンフィクション『東大なんか入らなきゃよかった』は、卒業生たちが直面する厳しい現実をルポタージュ形式で描いています。

東大卒業生の多様性

この本は、メガバンクや官僚など、いわゆる社会的エリートとされる職業に就く卒業生たちの中にも、入学前に抱いていた期待とは異なる人生を歩んでいる人々がいることを明らかにします。たとえば、メガバンクでの中傷や、過酷な労働環境での苦しみ、年収230万円の地下街警備員としての生活など。それぞれの卒業生が抱える悩みを通じて、東大に入ることが全てではないという新たな視点を提供しています。

著者の視点

池田渓は東大卒業生として、自身の経験を基に、入学後に直面する過酷な競争や独自の進級制度、就職市場の変化などについて深く掘り下げていきます。特に、入学試験を突破した大学生の多様なタイプや、推薦入試の裏事情など、一般には知られていないリアルな情報を提供している点が本書の特徴です。文庫化に際しては、卒業生たちの5年後の状況を追加取材し、よりリアルな物語を描くことに成功しています。

今回の増補版

2020年に初版が出版された際に大きな反響を呼んだ本書ですが、帝国の一員としての期待が一転して後悔へと変わる場面では、著者の目線を通じて、他の卒業生たちの体験とも重なります。池田さんの文章は、単なる経験談ではなく、より広い社会問題への問いかけを含むものが多く、それがどれほど辛辣であるのかを痛感させられます。

パートナー書籍の存在

また、本書と対になる形で出版される西岡壱誠の『それでも僕は東大に合格したかった』も注目の一冊。彼は、偏差値35からの逆転劇というテーマで、自身の成功と失敗を語っています。この2冊を同時に読むことで、異なる視点から東大という存在をより深く理解することができるでしょう。特に、両著者の対談記事が掲載される雑誌「波」4月号では、東大の多面性についての議論も楽しめます。

結論

『東大なんか入らなきゃよかった』は、学歴社会の光と影を描く重要な作品です。池田渓のルポを通じて、名門大学を卒業した後の厳しい現実について考えさせられることでしょう。学歴が全てではない、逆にそれが重荷となることもあるのだという視点を持つことが、今を生きる私たちには重要です。さあ、ぜひ手に取ってその内容を味わってみてください。