ゾウを守る新たな一歩、象牙を使わない箏コンサートの成功

【象牙を使わない箏コンサートの開催報告】

2025年10月31日、東京・渋谷区にある東京ウィメンズプラザで、特別な「象牙を使わない箏コンサート」が行われました。このイベントは、認定NPO法人野生生物保全論研究会（JWCS）が主催し、絶滅の危機にあるゾウを斡旋するために象牙なしで音楽を楽しむ新しい形を提供しました。

イベントの背景

ゾウはかつてアフリカ全土に生息していましたが、象牙の需要が急増し、1964年から2016年の間にサバンナゾウは70%、マルミミゾウは90%も減少してしまいました。このため、世界中の主要な象牙消費国は国内取引を禁止しましたが、日本は今なお象牙が容易に購入できる国として注目を集めています。そんな中で、やっと開発された象牙代替の新素材を用いた箏の演奏が、ゾウの保護への一歩を象徴する形で行われました。

開会のあいさつ

演奏会では、主催者である認定NPO法人JWCSの事務局長鈴木希理恵が開会の挨拶を行い、ワシントン条約における日本の象牙市場に対する国際的な批判や、アフリカでの密猟の現状を語りました。密猟者が引き起こす悲劇を追悼し、象牙代替素材の必要性と今回のコンサートが持つ意義について訴えました。

講演セッション

続く講演セッションでは、まず認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金の坂元雅行氏が「ゾウの密猟と日本の象牙市場」について講演しました。日本の象牙需要がどのように国際的な密猟を助長したのか、その歴史的背景を明らかにしました。

次に、中越パルプ工業株式会社の橋場洋美氏が、「アフリカのゾウを守る象牙代替への挑戦」と題し、竹を利用した新素材「nanoforest」の開発を紹介しました。これにより、環境にも優しい形での和楽器製作が実現しています。

演奏の魅力

演奏された曲目は、象牙代替品を用いた箏の独奏とアフリカの伝統打楽器とのコラボレーションが特徴です。マイクを使わずに行われた演奏は、自然な音色の美しさを際立たせ、飲み込まれるような感動を参加者に与えました。特に、ゾウを守りたいという願いが込められた音楽は、聴衆とアーティストの心を一つにしました。

最後にコンサートを振り返る参加者の声も、心に残る温かいものでした。「代替素材でも素晴らしい音楽が生まれることを知った」「象牙問題の深刻さを改めて認識した」といった感想が多く寄せられ、観客がこのコンサートを通して学びを得たことを示しています。

新しい文化の創造

コンサートを通じて、象牙を使わないことで得られた新たな文化の形が皆に広まることを願います。ゾウを守るための音楽による試みは、私たちの未来への希望であり、国際社会との連携を深める象徴でもあります。このような取り組みがさらに広がり、音楽と自然が共存できる世界の実現に向けた第一歩となることを期待しています。

次回は、ワシントン条約締約国会議の報告会に関するイベントも開催される予定です。参加者はこの機会にぜひ、世界の動向を把握し、動物保護の重要性について考える場としても利用してほしいと思います。