3年連続で増加するアニメ制作会社の倒産・廃業問題とその背景

アニメ制作会社の倒産・廃業問題が深刻化

アニメ制作会社の倒産や廃業が、2025年の初めにかけて続出しています。株式会社帝国データバンクの調査によれば、2025年1-9月の間にアニメ制作会社の倒産は2件、休廃業・解散が6件発生し、計8件が市場から退出しました。この数値は、年間で過去最多だった2018年（16件）と同水準で推移しており、3年連続での増加が懸念されています。この厳しい現状は、アニメ制作産業が抱えたさまざまな問題に起因しています。

倒産や廃業の背景

特に目立つのは、元請・グロス請に属する制作会社の苦境です。過去5年間に市場から退出したアニメ制作会社の約半数がこのカテゴリーに属しており、彼らは直接制作を手掛ける能力を有しているため、その倒産は業界全体に大きな波を及ぼします。具体的には、制作を行った「エカチエピルカ」（北海道）が7月に破産し、さらには放映延期の問題も抱えている「クラウドハーツ」（東京）が2024年12月に破産。3DCGアニメーション制作の「5（ファイブ）」（東京）も2024年6月に破綻しました。このような倒産が続出する背景には、コロナ禍による受注の減少から急に受注が増加したものの、その供給能力が追いつかず、更に円安による制作外注費の高騰が収益性を圧迫しているという事情があります。

市場規模の拡大と利益の乏しさ

アニメ制作業界は、海外での高い評価を受けて需要が拡大しているものの、実際の制作現場では「利益なき繁忙」と呼ばれる状況に陥っています。帝国データバンクの調査によると、元請制作の約6割は2024年度の業績が悪化すると予想されています。制作コストの高騰に対する価格転嫁ができず、特に中小規模の制作会社では、収益基盤が不安定で、IP（版権）収入も乏しく苦しい状況が続いています。

2025年秋には、多くのアニメが放映予定でしたが、相次ぐ制作の延期が発生しています。このことは、業界全体での人材不足が深刻になっている証拠と言えるでしょう。アニメーターなどのマンパワーが不足しているため、制作スケジュールが守られず、そこからさらに業界全体の信頼も失われています。

助け合いの精神が求められる

現在、製作委員会に参加している企業の中には、制作費の増加に柔軟に対応しようとする動きもあります。しかし、中小制作会社では依然として二次受託としての制作を行うことが多く、自社でIPを所有していない場合、ヒットによる恩恵も享受できません。ましてや、収益力が低く資金面で不安定な企業が多いため、アニメ制作業界全体の持続可能な成長に向けて、適正な取引環境を整え、アニメーターの人材育成といった支援が急務です。

今後、アニメ制作業界が持続的に成長するためには、関係者全体が協力して新しいビジネスモデルを構築し、共に支え合う姿勢が求められることになります。