血糖値をきっかけに立ち向かった膵臓がんとの闘い
膵臓がんが「難治がん」として知られる理由の一つは、その発見が遅れやすいことにあります。自覚症状がほとんどないため、早期発見が非常に難しく、多くの人が気づいたときには手遅れとなってしまうことが少なくありません。著者である山本敏明氏も、長年の糖尿病との闘いを経て、血糖値の異常から自身の健康状態に重大な変化が起きたことに気づきました。
著者は、元経産官僚というキャリアを持ちつつ、もともと医学に強い関心を寄せていた人物です。彼は、日常的に体調の管理や健康維持に努め、運動や食事にも気を使ってきました。しかし、いつも通りの生活を続けていたにもかかわらず、血糖値が上昇し続けるという異常な事態が襲いました。「これはただの数値の変動ではなく、何かが起きている」と直感した著者は、医師に設けた検査を要求し、そこで膵臓がんの疑いが示されました。
医師からは「問題ない」と告げられましたが、自分の感覚を信じたことが早期対応をもたらしました。医学的な証拠に乏しい中でも、著者は自らの体の声に耳を傾け、行動を起こしました。この早期発見が彼の闘病生活を大きく左右することになったのです。
著書『膵臓がんに克つ ―毎週ゴルフをしながら乗り越える―』では、著者が膵臓がんと向き合っていく過程を克明に記しています。入院治療、手術、抗がん剤治療、そしてその後の日常生活への復帰と、闘病のリアルな様子が描かれています。特筆すべきは、手術を経て抗がん剤治療を受ける中でも、毎週ゴルフを続け、趣味を通じて心身のバランスを保とうとした点です。
多くの人が「病気になったら全てを犠牲にしなければならない」と考えがちですが、著者は「病と共に生き、共に乗り越える」ことに重きを置いた視点を持っています。日常生活の中で自分自身を大切にする姿勢こそが、病気との向き合い方を変える一歩となるのです。
本書は、医療現場で感じた疑問や葛藤も率直に綴られており、同じ病を抱える患者やその家族、または健康診断で異変を指摘された経験がある方々にとって、非常に示唆に富んだ内容となっています。病気と日常生活の両立に悩むすべての人に共通するメッセージが込められているのです。
具体的には、自らの経験を通じて著者が気づいたことは、医療との接し方や自分の体を信じること、そしてあきらめない姿勢の重要性です。これらは闘病だけでなく、日々の健康管理や生活全般にも役立ちます。
病気について語ることは、しばしば悲壮感を伴いますが、本書では闘病を特別な美談として捉えるのではなく、あくまでリアルな経験として描いています。著者の前向きな姿勢と、確固たる信念は、疾病に直面する全ての人々に勇気と希望を与えることでしょう。実体験をもとにした著者の言葉は、まさに今を生きる私たちにとって、大いに学びとなるのです。
この書籍が、膵臓がんや糖尿病を抱える多くの人にとって、希望をもたらす一助となることを心から願っています。また、医療に不安を感じる方たちにとっても、貴重な心の支えとなれることを期待しています。