生命科学の進化と倫理を描いた感動作『私は誰の子？』

知られざる命の誕生と倫理の軌跡

書籍『私は誰の子？ LGBT産婦人科女性医師の偏愛顛末記』の著者、香美清克が描くこの物語は、1970年代の女子高生、木下保江と小柴百合の青春から始まります。彼女たちは互いに親密な関係を築きながらも、それぞれ異なる進路を選ぶことになります。理系の才能を持つ保江は医師を目指し、文芸を愛する百合は彼女に新しい視点を与えます。

一方、保江は医師としてのキャリアを築く中で、遺伝子研究に心を奪われていきます。しかし、彼女は百合への秘めたる想いを断ち切れず、倫理に反することを知りながら、自らの身体を使って体外受精を行うことに決めます。この行為が、彼女の人生にどのような影響を与えるのか。時間と共に積み重ねられる感情と科学の選択は、避けがたい悲劇の道へと向かいます。

生命科学の進化が人の倫理観を揺るがし、様々な技術が進展を見せる中で、この小説は私たちに「命を作り出す」ことへの賛否と、その影響を問いかけます。精子や卵子の凍結保存、人工受精、遺伝子研究、代理出産は今や現実のものとなり、私たちはどこまで神の領域に足を踏み入れていいのか考えさせられる内容です。

これらの技術は、家庭内だけでなく未来のLGBTコミュニティにも明るい希望を提供します。自身の遺伝子を持った子供を育てることが可能になる日が、技術の進化と共にやがて訪れるでしょう。しかし、その一方で、法律や倫理に関する議論は続いており、社会の中でどのように受け入れられていくべきかが課題となります。

この作品は、医療描写のリアリティと、登場人物たちの心理描写を通して、命の誕生とそれに関わる科学、倫理、人間の感情の交錯を深く掘り下げています。保江と百合の関係、そして彼女たちが選ぶ道が、生命の重みを如何に感じさせるのか、不安や希望が絡み合うストーリーは心を打たれます。

著者について

香美清克、本名は大森俊弘。1947年に福岡県で生まれ、東京薬科大学を卒業後、医師や薬剤師として活動。彼の経歴は豊富で、医学博士の資格も有しています。過去には多くの執筆活動を行い、著書には科学や医療にまつわるテーマが多く扱われています。また、母体となる株式会社パレードは、デザイン制作会社として優れた書籍を提供し続けています。

新刊『私は誰の子？』は2025年11月21日に発売予定で、276ページの内容となっています。私たちが直面する未来の選択肢について、考えるきっかけを与えてくれる一冊になることでしょう。興味のある方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。