月村了衛『虚の伽藍』が高校生直木賞受賞
2024年、月村了衛の新作『虚の伽藍』が第12回高校生直木賞を受賞した。この文学賞は全国の高校生たちが集まり、直近1年間の直木賞候補作から「今年の一冊」を選ぶもので、今年は全国から47校が参加、選考会は5月18日に行われた。
今年の一冊に選ばれた理由
『虚の伽藍』は、若き僧侶が京都の闇社会を生き抜く姿を描いたピカレスク・ロマンだ。候補作には他に麻布競馬場の『令和元年の人生ゲーム』や、伊与原新の『藍を継ぐ海』などが名を連ねたが、最終的に月村の作品が選ばれた。高校生たちがどのようにこの作品に魅了され、議論を重ねたのか、その詳細は「オール讀物」7・8月号で公表される予定だ。
受賞への著者のコメント
「正直、意外でしたが、大変光栄に思っています。自分の作品を通して読書の喜びに触れてもらえたのなら、これ以上のことはありません」と月村は語った。読者に向けて、今後も自らの目で読書の楽しみを見つけて欲しいと願いを込めた。
高校生直木賞の位置づけ
この文学賞は、フランスの「高校生ゴンクール賞」をモデルにして制定され、30年以上の歴史を持つ。日本の高校生たちが文学を通じて表現力や思考力を育むことを目的としている。参加者たちは直木賞候補作品を通じて、文学への理解を深め、選考を通じて意見を交わし合う。
『虚の伽藍』のストーリー
『虚の伽藍』は、バブル期の京都を背景に、欲望に翻弄される人々を描く物語である。主人公の僧侶、凌玄は、実家の寺を支えるため、燈念寺派の宗務院に勤務している。しかし、ある日、寺の所有する土地の売却に関わる中で、宗派内の不正に気付く。これが彼の運命を大きく変えるきっかけとなる。
凌玄は、宗派の実力者に目をつけられ、その窮地を救ったのは京都の闇社会の実力者、和倉だった。彼は、欲望にまみれる燈念寺派を正すため、悪に手を染めざるを得なくなる。果たして、凌玄はその道の先に何を見出すのか、衝撃の展開が待ち受けるのだ。
月村了衛の作家としての軌跡
月村は、既に多くの作品を発表しており、その全てが現代日本の闇を描いたものだ。過去には『土漠の花』で日本推理作家協会賞を受賞し、『欺す衆生』で山田風太郎賞を獲得するなど、数々の賞を受けている。『虚の伽藍』も同様に、彼の新たな代表作として期待されている。
書籍情報
この作品は、2024年10月18日に新潮社から発売予定で、四六判ハードカバーでの刊行。定価は2,200円(税込)、ISBNは978-4-10-339533-1となっている。詳しい情報は新潮社の公式サイトでも確認できる。
今後も月村了衛の活躍に注目し、彼が描く物語の世界に触れてみてはいかがだろうか。