鉄道写真の巨匠・広田尚敬、集大成を出版
本日、2023年11月5日、鉄道写真のレジェンド・広田尚敬さんの新たな作品集『鉄道写真広田尚敬』が小学館より発売されました。この一冊に収められたのは、広田さんが自ら厳選した未発表作品を含む約400点もの名作です。今秋、90歳を迎える広田さんですが、その情熱は衰えることを知りません。
広田尚敬さんは、1960年からフリーランスとして鉄道写真家としてのキャリアを歩み始め、以来、鉄道写真の分野を先駆けて切り拓いてきた「神様」と称される存在です。1968年に日本初の本格的鉄道写真展を開催し、1970年代のSLブームや1980年代のブルートレインブームを牽引した彼の作品は、独自のスタイルである「広田調」として知られ、多くの鉄道ファンに影響を与えています。
広田さんが鉄道写真を撮り始めたころ、鉄道の車両や編成の正確な記録が最優先とされ、その他の表現は重視されていませんでした。しかし、広田さんはその枠を超え、鉄道への深い愛情と感動を表現するために四季折々の日本の美しい風景や、日常生活に触れる人々の姿も捉えました。こうしたアプローチにより、彼の作品は詩情豊かでありながら、同時に昭和から平成、そして令和の日本人と鉄道の貴重な記録でもあります。
広田さんの技術力は特筆すべきもので、特に「流し撮り」や「動止フォト」といった独自のテクニックを駆使し、鉄道写真を一種のアートにまで高めました。例えば、1973年の作品では、C55が牽引する旅客列車の力強さと疾走感をスローシャッターで捉え、多くの人々の記憶に残る名作となりました。また、1975年にはD51の先端を捉え、激しい煙を超望遠で表現した力作も話題を呼びました。
さらに、記憶に新しい1975年12月14日、室蘭本線でのSLが最後の旅客列車を牽引した後、機関士の目に光る涙をカメラに収めた場面は、広田さんの感受性を感じさせます。彼はただカメラを構えるだけではなく、人々の心の動きや感情も写し取りました。
1960年代の川崎市電の研究においては、車内の女性に焦点を当て、当時の暮らしを色濃く反映させた作品を残しました。1990年の作品では、新幹線と富士山という日本の象徴を一枚の作品に収め、逆さ富士の表現にも挑戦。1980年代のブルートレインブームを迎えた頃には、背景が流れる一方で列車は静止して見える「流し撮り」の技術を駆使して、よりアーティスティックな視点を提供しました。
そんな広田さんが今作においても、彼の代表作である「C62動輪」を新たに現像したものが、初回分出荷特典として用意されています。この作品は六つ切り判の銀塩プリントで、広田さん直筆のサインが入るという特別仕様です。さらに、広田さん愛用のカメラやカメラバッグが抽選で当たる応募券のチラシも同梱されており、ファンにはたまらない内容となっています。
書籍概要
- - 書名: 『鉄道写真広田尚敬』
- - 価格: 55,000円(税込)
- - ページ数: 318ページ(B4判変型ケース入り)
- - 発売日: 2023年11月5日
- - 出版社: 小学館
鉄道写真の新たな扉を開くこの書籍、ぜひ手に取ってご覧いただきたい逸品です。広田さんの情熱と才能が詰まった一冊を通じて、日本の鉄道の魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。