石村博子著『脱露シベリア民間人抑留、凍土からの帰還』が講談社本田靖春ノンフィクション賞受賞

石村博子の栄誉ある受賞

2025年7月17日、講談社が主催する第47回「講談社本田靖春ノンフィクション賞」の最終選考会が開催され、石村博子氏の著書『脱露シベリア民間人抑留、凍土からの帰還』が栄えある受賞を果たしました。この書籍は2024年7月に株式会社KADOKAWAから発売される予定です。

受賞の背景

石村氏は受賞コメントの中で、シベリアの民間人抑留者についての公的資料が少なく、手記の断片しか残されていない現状を指摘しています。「自己意思残留者」として日本政府から切り捨てられながらも、異国で生き抜いてきた方々の存在を強調し、彼らの声を聞いたことに感謝の意を示しました。戦後80年の節目に、これまで顧みられなかった歴史を伝えられたことを嬉しく思っているそうです。

著書の内容

本書は、8年以上にわたる取材によって、樺太民間人抑留の実態に光を当てた重要な作品です。昨秋には第10回「シベリア抑留記録･文化賞」も受賞しており、これにより2冠達成という快挙を成し遂げました。

この作品は、13歳の少年が密航者としてシベリアに送られ、その後40年以上も故国の土を踏めずに生き続けた実話を扱っています。敗戦後、南樺太がソ連に占領された時代、多くの人々が帰国を望みながらも不当逮捕や強制連行に遭いました。彼らがどのように生き延び、またどのように戦ったのか、その気持ちや尊厳が明らかにされています。

物語の深み

著書では、鉄道員や炭鉱夫、大工、運転手といったさまざまな職業の方々が不当な理由で逮捕され、ラーゲリに連行された後の苦しみや闘いを描写しています。苛酷な労働から解放された後も、ソ連の制度により強制移住させられるなど、過酷な運命に翻弄され続けた人々。

生き延びるために彼らはソ連国籍を取得し、日本政府からは「自己意思残留者」として無視されました。ソ連崩壊後、ようやく彼らの実態が見えてくるまでの過程も描かれています。これらの人々の苦悩や再会を通して、不条理な運命に直面した彼らの姿を丁寧に紡いでいます。

著者の情熱

石村博子氏は1951年に北海道室蘭市で生まれ、ノンフィクションライターとして活動してきました。関連するNPO法人にも所属し、シベリア抑留者の存在に関心を持つようになりました。その結果、著書には過去の歴史に埋もれた人々のストーリーが集約されています。著作には、少年時代の引揚げやアイヌ文化に関する題材など多様なテーマが散りばめられています。

まとめ

このように、『脱露シベリア民間人抑留、凍土からの帰還』は、歴史の中で忘れ去られていた小さな声を集め、彼らの尊厳を取り戻すために書かれました。石村博子氏の情熱と8年の努力が結実し、この度、名誉ある賞を受賞したことは、彼女が捉えた物語の重要性を思い起こさせるものです。

この書籍が、シベリア抑留者の真実を知る契機となり、多くの人々に響くことを願っています。