内藤剛汰が描くシンギュラリティ後の人間社会の未来とは
合同会社FYBE.jpの代表である内藤剛汰氏が、noteにて2025年から2026年にかけて連載した「シンギュラリティ後の社会」シリーズが注目を集めています。この連載では、既に現実味を帯びつつあるAGI(汎用人工知能)と人間の関係について掘り下げています。内藤氏は、技術的な解説を行うのではなく、AIがもたらす「仕事や人間関係、意味、交換」といった人間の存在の根幹に迫る問いを投げかけています。
彼の著作の特徴は、技術が進化することによって人間の存在構造がどのように変わるのか、その結果何を「握る」ことができるのかという未知なる領域への挑戦です。この問いに対し、内藤氏は答えを一方的に示すのではなく、常に考え続ける姿勢を大切にしています。彼の連載は、全14本に渡り、約1年3ヶ月にわたって続きました。
AGIはいつ到来するのか?
AnthropicのCEO、ダリオ・アモデイ氏は、2026年2月に発表したエッセイの中で、AGIの到来を1〜3年以内と予測し、その知能の集積が秒読み段階に入っていると示唆しています。しかしながら、多くの議論は、依然として「AIに仕事を奪われるのか」という浅い入口にとどまっています。
そこで内藤氏は、この流れに対抗する形で、AIの進化がどのように人間の基本的な存在様式を変えるかを考える必要があると提起します。仕事が奪われるかどうかというパラダイムを超えて、人間の存在そのものが急変している可能性について考察しています。
連載を通じて生まれた補助線
この連載の中で内藤氏は、考えるための基盤となる4つの概念を策定しました。
1.
時定数:スキルを身につけるのにかかる時間がゼロに近づく過程。AIが導入されることで、従来3年かかっていたプログラミングスキルが3分で取得できる時代が来るかもしれません。この変化によって「時間をかけて得たもの」が意味を失うのではないかという懸念が示されています。
2.
仙人と天才:人類の歴史における加速と不変のものに対する二つの生き方を考えるフレームワーク。AIと共に生きる「天才」と、加速から降りた「仙人」という存在がどのように共存するのか、という問いが投げかけられます。
3.
力と感:生産する力はAIに置き換わるが、感じる力は残るという考え方。しかし、この「感」を育むためには、人間同士の対話や経験が不可欠であり、それが失われつつある現実が指摘されています。
4.
BC/AC:コーディングの概念が変わることで、すべての職業に対する影響が発生するという指摘です。
AIとともに進む人間の未来
内藤氏は、Anthropicが進めているAIを「育てる」という観点からの研究についても触れています。AIに「憲法」を与え、価値観を内面化させる試みは、子供を育てるようなプロセスが必要であり、そこではAIと人間との間にどのような対話が生まれるべきかが重要だとしています。
内藤氏自身はAIを開発する立場ではなく、AIの時代を生きる一人の人間として、果たして我々がどのように変わり得るのかを問い続けているのです。
連載の構成と今後の展望
この連載は、2025年1月から2026年3月までという期間を通して、スキルの価値の変化や人間関係の転換点、さらには人間の存在そのものの意味が揺らぐ様子を詳細に描いています。
各章は「スキルの死」、「存在の転換」、「4つの破壊」、「統合、そしてまだ続く問い」と題され、人間社会が直面する根源的な問いに迫ります。
内藤氏の著作は、我々がこれからの時代にどのように生きていくのかを考えるための重要な道具となることでしょう。未来への不安や疑問を抱えながらも、常に思考を続けることの重要性を再確認させてくれる内容です。