戦後80年を迎える大久野島の歴史を紡ぐ絵本『うさぎのしま』の深いメッセージ

広島の大久野島を描いた絵本『うさぎのしま』

広島県に広がる瀬戸内海の小さな島、大久野島。この島は、今では約500羽の可愛らしいうさぎたちが暮らす「うさぎのしま」として知られ、多くの観光客を引き付けています。しかし、その裏には戦争の重い記憶が隠されています。

2025年の6月12日、世界文化社から発表される絵本『うさぎのしま』は、戦後80年という節目に、子どもたちに向けたメッセージを静かに発信します。著者は、絵本作家の近藤えりさんと、日本絵本賞を受賞したたてのひろしさんです。彼らは柔らかなパステル画を用いて、戦争と環境問題の重層的なテーマを紡ぎ出しました。

故事と現代が交錯するストーリー

物語は、親子が大久野島を訪れ、白いうさぎに出会うところから始まります。「あの子、白いね」「あの子のお母さんも白い？」という何気ない会話が、過去の封印された記憶を呼び覚ますのです。大久野島は、第二次世界大戦中に化学兵器の製造施設が存在し、白いうさぎが実験動物として使われていた「地図から消された島」でもあります。このストーリーは、可愛らしいうさぎたちと、彼らが過去に置かれた悲しい状況との対比を通して、深いメッセージを読者に伝えます。

人々がこの絵本を手に取ることで、戦争の歴史や環境問題についての理解が深まることを期待しています。巻末には、福島大学教授の兼子伸吾氏による解説があり、「地図から消された島」としての歴史や、うさぎにまつわる背景が詳しく掘り下げられています。この絵本は、過去と現在、未来を結びつける重要な一冊となるでしょう。

読者の反響

絵本の公開に先駆けて、書籍関係者や一般読者からの感想が続々と寄せられました。「場面が変わった瞬間、息を飲んだ」といった声や、「ガスマスクをつけた人に心が締め付けられる思いを感じた」との意見が寄せられています。さらに、戦争の悲劇を通じて環境問題を考える契機となることを望む内容もあり、多くの読者がこの作品を通じて大久野島の歴史について深く思索しています。

原画展とトークイベント

その刊行を記念して、全国各地で原画展やパネル展が開催される予定です。広島や京都、長野をめぐるこのイベントを通じて、絵本『うさぎのしま』の世界をさらに深く体感できるチャンスです。また、個別にトークイベントもあり、直接作者との交流を楽しむことができます。

- 原画展: 8月6日から広島や京都、長野で開催。
- トークイベント: ジュンク堂書店池袋本店を皮切りに、各地で行われます。

結論

『うさぎのしま』は、可愛いキャラクターを通じて深刻なテーマを伝え、未来を考えるきっかけとなる絵本です。おそらく、視覚的にも感情的にも深い印象をもたらすことでしょう。戦後80年の時期に、多くの人々に読み継がれ、語られることを願っています。この一冊は、単なる絵本ではなく、世代を超えた教育的なメッセージでもあるのです。