新たな昭和を描く《普天を我が手に》
日本の歴史の中でも特に激動の時代である昭和。著者の奥田英朗が、この時代をテーマにした三部作の第一部『普天を我が手に』を2025年6月18日に刊行する。これは、1926年に生まれた四人の赤ん坊を中心に描かれる壮大な物語であり、彼らの成長と時代の波を通して、昭和を生き抜く姿が印象的に描寫されている。
昭和の四人の赤ん坊
物語は、大正15年のクリスマスの朝、竹田耕三のもとに誕生した竹田志郎から始まる。彼は軍人としての道を歩むことになるが、次第に動乱が待ち受けている時代に巻き込まれていく。その横では、金沢の侠客一家に拾われし矢野四郎が登場。侠客として生きる道を選び、厳しい世界で育つ姿は、昭和の裏側を垣間見せる。
また、進歩的な婦人雑誌の編集者森村タキから生まれたノラは、シングルマザーとして新しい時代の代表的存在となる。一方、中国ではジャズマンの五十嵐譲二のもとに生まれた満が、興業の世界の中で成長していく。
この四人の赤ん坊たちが時代の変遷に翻弄されながらも、生き抜く姿は、現代の読者にも強い勇気と感動を与えるだろう。
奥田英朗の圧倒的な表現力
この作品の魅力は、なんといっても奥田英朗の持つ圧倒的な構成力とリーダビリティにある。これまでに直木賞や吉川英治文学賞など多くの賞を受賞してきた彼だからこそ成し得る表現が、読者をストレスなく引き込む。
作品は昭和の政治、軍事外交、裏社会、メディア、そして婦人活動という、様々なテーマを一冊の中に内包している。こうした背景を華やかなドラマとともに描写し、全ページを通じて読者を愉しませるのだ。
壮大なサーガの第一部
第一部は、大正天皇崩御から太平洋戦争の開戦までの期間を背景に、親世代の視点を中心に描かれている。読者は、戦争の時代を経て進化した昭和の世相や人々の生き様を通じて、彼らがどのようにして新しい時代を切り開いていったのかを知ることができる。
今後の第二部、第三部にも期待が高まる中で、奥田英朗自らがマスメディア向けにインタビューに応じる予定もあり、さらなる情報が集まることが期待されている。
書籍詳細
- - タイトル: 『普天を我が手に 第一部』
- - 著者: 奥田英朗
- - 発売日: 2025年6月18日(水)
- - 定価: 2695円(税込)
- - ページ数: 608ページ(予定)
- - ISBN: 978-4-06-538876-1
この壮大な昭和史サーガが、どのように読者の心に響くのか、期待と興奮をもって待ち望みたい。