遠藤周作の未発表小説『影に対して』の重版決定
2023年1月17日、大学入学共通テストの国語の問題で、遠藤周作の小説『影に対して母をめぐる物語』が出題されました。この出題に伴い、試験後には多くの反響を呼び、その後重版が決定されました。本作は、遠藤周作が生前に未発表のまま残した小説の一つで、2020年に長崎市の遠藤周作文学館で発見されました。これにより、遠藤文学の新たな側面が明らかになることに期待が寄せられています。
重版の背景と作品の概要
『影に対して』は、遠藤周作が彼の没後に完成されていたものが見つかった初めての作品となります。この小説は、作者の心の内を映し出すかのような、不思議な魅力を湛えています。タイトルが示す通り、主人公は母を中心にした物語を展開しており、母の存在が彼の日常にどのように影響しているのかが描かれています。「母は必ずしも優しい女ではなかった。しかし、真に母を棄て、母と別れられる者などいない」という印象的な一文からも、作品の深いテーマを感じ取ることができます。
2020年に発見された草稿の中には、自筆による草稿と清書原稿が含まれており、これが出版社から正式に重版されることになった要因です。その内容は、離婚を経験した親の元で育つ子供が直面する様々な感情や選択についてのもの。作品には、母の強い意志や、生活を大切にする父との葛藤が描かれ、印象的な短篇が6編収められています。
遠藤周作の生涯と業績
遠藤周作は、1923年に東京で生まれました。彼の幼少期は旧満州大連で過ごし、その後神戸へ帰国。12歳でカトリックの洗礼を受け、意志を強めていきます。慶應大学文学部を卒業後にはフランスに留学、1955年に『白い人』で芥川賞を受賞するなど輝かしいキャリアを築き上げました。彼は日本における精神文化とキリスト教の問題を常に追求し、その作品にはユーモアや歴史小説も数多く存在します。
主な作品には『海と毒薬』『沈黙』『イエスの生涯』『侍』『スキャンダル』などがあり、彼の文学は多くの読者に影響を与え続けています。1995年には文化勲章を受章し、日本文学界における彼の存在感は揺るぎないものとなりました。
書籍情報
- - タイトル: 影に対して母をめぐる物語
- - 著者名: 遠藤周作
- - 発売日: 2023年2月25日
- - 造本: 新潮文庫
- - 定価: 649円(税込)
- - ISBN: 978-4-10-112340-0
- - URL: 新潮社公式サイト
この度の重版決定を機に、遠藤周作の文学に触れる絶好の機会をお見逃しなく。彼の作品が持つ深層に迫り、人生や人間関係の多様性を再認識する貴重な経験となることでしょう。