フェルディナント・フォン・シーラッハの新たな傑作短編集『午後』
本屋大賞「翻訳小説部門」で第一位を獲得したドイツの著名作家フェルディナント・フォン・シーラッハの最新短編集『午後』が、2025年11月20日に刊行されます。シーラッハは元弁護士としても知られ、これまでに多くの話題作を世に送り出してきましたが、今回の作品もまた、その期待を裏切るものではありません。
この短編集では、弁護士で作家の「私」が、世界各地で出会うさまざまな人々の物語を通じて、人間の深層に迫ります。特に、彼がかつて弁護した依頼人が抱えていた秘密や、イタリア滞在中に耳にした衝撃的な身の上話、日本で出会ったアメリカ人女性との出会いなど、多彩なエピソードが展開されます。どの物語も、一見単なる出来事として片付けられそうな状況が、読者に深い印象を残すように描かれています。
本作の魅力をさらに引き立てるのが、物語の合間に挟まれる短いエピソードです。トーマス・マンやフィッツジェラルド、イサドラ・ダンカンといった著名人や、市井の人々のケースを絡めた言葉が非常に印象深く、物語の深みを増す要素となっています。
著者のフェルディナント・フォン・シーラッハは、刑事事件弁護士として活躍していたため、法律や人間の罪に関するテーマを的確に捉えています。彼の過去の作品、『犯罪』や『罪悪』などでは、罪を犯した人々の悲しみや愛おしさが描かれており、『コリーニ事件』においては法廷小説として新たな地位を築きました。これに加え、戯曲やエッセイなども手掛けており、多才な作家としての顔を持っています。
『午後』は、台北、東京、マラケシュ、ウィーン、チューリヒ、パリといったさまざまな都市を舞台に、過去に囚われた人々の心情を豊かに描写しています。特に、過去の出来事がどのように現在の瞬間に影響を与えるのか、その因果関係に深く思いを馳せるきっかけを与えてくれる作品です。
実際に小説の中に登場する物語は、死や罪、そして何気ない日常が突然に変わる瞬間を巧みに唯一の視点で捉えており、読者はそれぞれの物語に引き込まれていくでしょう。全26章から成るこの短編集は、ページを読み進めるごとに心に鮮やかな印象を刻み込み、読み終えた後もその余韻が長く残ります。
書誌情報
- - 書名:午後
- - 著者:フェルディナント・フォン・シーラッハ
- - 訳者:酒寄進一
- - 判型:四六判上製
- - ページ数:166ページ
- - 発売日:2025年11月20日
- - ISBN:978-4-488-01154-3
- - Cコード:C0097
- - 価格:2,090円(税込)
- - 装画:タダジュン
- - 装幀:山田英春
この傑作短編集『午後』の刊行を是非ご期待ください。シーラッハファンのみならず、初めて彼の作品に触れる方にも多くの感動を与えることでしょう。彼が描き出す人間の深層に、ぜひ触れてみてください。