世界ひと皿紀行:納豆の物語
料理を通じて地域や文化を探求する岡根谷実里さんの最新刊『世界ひと皿紀行料理が映す24の物語』が、2月18日に発売されます。本書では、彼女が訪れたさまざまな地域の射影として、24のエッセイが軽快に綴られています。その中でも特に注目すべきは、「アジアのひと皿」として紹介される、インドのナガランドにおける納豆の物語です。
ナガランドの台所探検
著者がナガランドを訪れたのは、発酵食に興味を持つ知人の紹介によるものでしたが、その世界は彼女の予想を覆すものでした。ナガランドではスパイスを一切使わず、発酵食品と唐辛子が料理の基本です。飛行機から見下ろすと、険しい山々と深い森林が広がり、空港に降り立つとその美しい風景が広がっていました。
料理を通じた交流
滞在先で出迎えられたのは、山道を6時間も車で走った先に住む家庭でした。台所は二つあり、特に外の台所では、母親が様々な発酵食品を作りながら、温かい家庭の雰囲気を醸し出していました。無塩発酵たけのこや、里芋の葉を使った料理、そして特に驚くべきは日本の納豆に似た「アクニ」が存在していることです。これは納豆よりも強い匂いを持ち、バナナの葉で包んで発酵させる独自の技法が用いられていました。
豚肉のアクニ煮を堪能
ある日、母親から「今日は燻製豚肉のアクニ煮を作ろう」との言葉が!豚肉をぬるま湯で準備し、アクニや赤唐辛子、トマトを加えて煮込むその光景は、著者にとって新しい文化に触れる貴重な瞬間でした。煮込むにつれ、日本での納豆の香りを思い出し、懐かしさを感じながら待ちわびました。
料理が紡ぐ物語
出来上がった料理は、まさにみそ煮のような味わいで、著者はその料理を通じて家族との距離が縮まったのを実感しました。その一方で、アクニの匂いが差別の要因になっているという複雑な側面も浮き彫りとなります。強烈な匂いの食事は、人々を結びつけたり、または分断させたりすることがあるのです。
著者プロフィール
岡根谷実里は長野県生まれの「世界の台所探検家」です。東京大学大学院を修了後、クックパッドを経て独立、170以上の家庭を訪問しています。彼女の探求は、地理や文化を超えた人々の生活に光を当てています。最新刊では、その独自の視点から生まれた物語を楽しむことができます。
書籍情報:
- - 著者: 岡根谷実里
- - 定価: 2,200円(税10%含む)
- - ページ数: 200ページ
- - ISBN: 978-4-635-24130-4
- - 商品情報ページ: 山と溪谷社