江戸川乱歩と杉原千畝、交わるはずのなかった友情
青柳碧人著の『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』が、本日ついに刊行されました。江戸川乱歩と杉原千畝、異なる背景を持つふたりの巨星が、青春を通じて描く意外な友情物語。実際に存在した歴史的人物同士の接点に焦点を当て、未だかつて書かれたことのない壮大な物語が創り出されています。
波瀾万丈のストーリー
作品の中で描かれるのは、江戸川乱歩という日本ミステリー界の巨匠と、杉原千畝という「東洋のシンドラー」として知られる外交官の人生です。両者は同時代に生き、早稲田大学という同じキャンパスで青春時代を共にしたことがあるという意外な事実を背景に、もしも学生時代に出会っていたなら、という仮定から物語が始まります。
大学での出会いがなければ、二人はいかに違った人生を歩んでいたのか。この問いを胸に、著者はふたりの想像上の友情を描き出し、彼らの生き様がどのように交差し、新たなストーリーを紡いでいくのかを読者に伝えています。青春と歴史が交錯し、感動的なラストシーンでは熱い感情がこみ上げてくることでしょう。
メモリアルイヤーの意義
2025年は、江戸川乱歩の没後60年と杉原千畝のビザ発給から85年という節目の年に当たります。この本作の発表は、人生の集大成を感じさせる特別なタイミングでもあり、歴史的意義を深める要素となっています。
乱歩はミステリー界の確立に尽力し、その影響は今も続いています。そして千畝は、命のビザと呼ばれる制度の下、多くの人々を救った名外交官。彼らの人生を通じて、著者は現代においても響くテーマを掘り下げています。
同窓生の繋がり
実は、乱歩と千畝は早稲田大学の同窓生でもあり、その出会いは名物の蕎麦屋「三朝庵」でも描かれています。彼らが歩んだ同じ道のりの中で、数々の出会いや出来事がもたらした影響は、物語の中でも重要な要素です。この出会いが本作を考えるきっかけとなったのです。
歴史的人物たちの登場
物語には、横溝正史や松本清張といった文壇の名作家や、特に政治家の松岡洋右と広田弘毅、外交官の根井三郎などが実名で登場します。こうした歴史的背景を追いながら、著者はふたりの物語を広げていきます。おそらく歴史を知ることで、読者はより深く感じ、楽しむことでしょう。
新境地を開いた青柳碧人
青柳碧人作品は、軽快で明るい文体で知られていますが、本作ではそのスタイルを変え、より深いテーマを持った物語を展開しています。直木賞作家の門井慶喜が高く評価するこの作品は、青柳の新たな歴史小説としての地位を確立することでしょう。
装画について
本作の装画は、漫画家の鳩山郁子によって描かれています。その繊細な表現と独特の美しさは、物語の内容をより引き立てており、作品の世界観に一層の深みを与えています。
結びとして
「真の友人はあなただけでしたよ」という言葉が、物語の核心を伝えているかのようです。友情とは一体何かを考えさせられる感動作であり、そのテーマは世代を超えて、多くの読者に受け入れられることでしょう。
この『乱歩と千畝』は、歴史と友情をテーマにした忘れられない物語です。ぜひ手にとって、その感動を感じてください。