兵隊とヒョウ、奇跡の絆を描いた物語
80年前の中国。日本の兵士たちが戦火の中で出会ったのは、猛獣のヒョウだった。この物語は、実際にあった「兵隊さんに愛されたヒョウのハチ」の感動の実話である。著者、祓川 学が描くこの作品は、ただの戦争物語ではなく、命の大切さや友情の尊さを教えてくれる一冊だ。
昭和12年の日中戦争
物語は、昭和12年7月、中国で盧溝橋事件が発生し、日中戦争が始まる中、若き兵士、成岡正久が日本軍の一員として戦地へ向かうところから始まる。成岡さんは「くじら部隊」と呼ばれる部隊に所属し、多くの危険が待ち受ける中国の大地で任務に従事することになる。高度な作戦を遂行する中で、彼の心に残る存在が現れる。
出会いと友情
その運命的な出会いは1941年のこと。成岡は農民からの依頼で、ヒョウを退治するために牛頭山へ向かう。そこで見つけたのは、親ヒョウが逃げた後に残された小さな子ヒョウだった。彼はその子ヒョウに「ハチ」と名付け、以降二人は深い絆を築くことになる。ハチは成岡さんだけでなく、部隊の仲間たちにも愛され、彼らにとっての癒しの存在となった。
別れと再会の約束
しかし、時は流れ、成岡さんの部隊は米軍の飛行場攻撃の任務を受けることになる。悲しいことに、ハチを連れて行くことはできず、上野動物園に引き取られることが決まる。成岡さんと仲間たちは最後の夜を共にし、涙ながらにハチに別れを告げた。「ハチ、俺たちの分までも生きてくれ。」その言葉が切ない思い出として残る。
ハチの新しい生活
1942年、ハチは上野動物園に移され、そこでも彼は多くの人々に受け入れられた。人懐っこい性格から、すぐに人気者となったものの、戦況は悪化し、動物園に危険が迫る。動物たちの安全を守るため、動物園は苦渋の決断を迫られることとなる。
平和の象徴としての銅像
現在、ハチの剥製は高知県のオーテピアに展示されており、新たに建立された「ハチと兵士」の銅像は、戦争の悲惨さを伝えるとともに、平和への願いが込められている。この銅像の存在は、未来へ向けた強いメッセージを放ち続けている。また、著者の祓川 学は、全小学校に本書を贈呈し、戦争の記憶を次世代に伝える活動も行っている。
おすすめの一冊
『兵隊さんに愛されたヒョウのハチ』は、読む者に感動と涙をもたらす作品である。命の尊さや友情、そして居場所を失った者たちの思いを深く掘り下げたこの本は、子どもから大人まで多くの人におすすめだ。この奇跡の物語をどうぞ手に取って感じてほしい。