新たな数学の探求をサポートする一冊
株式会社近代科学社が8月29日に発行を開始した新著『PARI/GPで計算しながら学ぶ整数論・暗号理論・符号理論』。この書籍は、数学の重要な3つの分野である整数論、暗号理論、符号理論を一体的に解説し、読者が理論を理解するだけでなく、実際の計算を通じてその深い知識を体得することを目指しています。著者は、数学の学術分野で高い評価を得ている鈴木英男氏で、数理学に関する豊富な知識と経験を基に、この教科書が構成されました。
充実したコンテンツ
本書は、B5版・並製で382頁にわたり、印刷版ではモノクロ、電子版では一部カラーで提供されます。基本定理から、暗号の構築原理、安全性、符号の技術まで、幅広い内容を網羅しています。特に数学の難解な概念を、具体的なプログラミング例を通じて理解できる点が特徴です。
整数論
整数論の章では、数の集合論や代数的な概念をはじめとし、さまざまな基本定理を丁寧に解説します。ユークリッドの互除法や合同式、フェルマーの小定理、中国剰余定理など、暗号理論の理解に必要不可欠な理論を詳述しています。特筆すべきは、楕円曲線上の演算やガロア体についての詳細な説明で、付録にはガロア体を生成するための原始多項式が一覧化されています。
暗号理論
暗号理論の章に移ると、現代暗号の基本的な構造やその安全性の根拠となる数学的困難問題が詳しく取り上げられています。公開鍵暗号の安全性や鍵交換プロトコル、デジタル署名におけるプロセスの説明に加えて、ブロックチェーンや暗号通貨についても深堀りされています。この部分を通じて、読者は最新の暗号技術の実用的な応用力を身につけることができるのです。
符号理論
さらに、符号理論のセクションでは、情報伝送における誤り訂正技術が紹介されています。情報源符号化や通信路符号化の基本定理から、LZ77符号、ハミング符号、リード・ソロモン符号など、幅広い符号化技術が解説されており、実践的な知識と技術が学べるようになります。QRコードをはじめとした具体的な例を通じて、現実の情報伝送にどのように応用されているかを理解できる内容となっています。
プログラミングを利用した学習
本書の大きな魅力は、PARI/GPやSageMathを使用したプログラミングの実例を豊富に提示していることです。これにより、単なる理論を学ぶだけでなく、実際の計算を通じて各アルゴリズムの動作を体験できるのです。読者は、難解な数学的概念をより身近に感じながら、自らの手で数学の世界を探求することが可能になります。
著者について
著者の鈴木英男氏は、三重県出身で、博士号を持つ数学者です。東北大学の助手、スタンフォード大学の客員研究員を務めた後、現在は東京情報大学で教授として教鞭をとっています。鈴木氏の豊富な経験と専門性が本書に凝縮されており、読者に深い知識を提供することが期待されています。
まとめ
『PARI/GPで計算しながら学ぶ整数論・暗号理論・符号理論』は、数学を深く学びたい方や基礎からしっかりとした理解を得たい方にとって、とても有意義な書籍です。数理科学や情報工学の分野での実用的なスキルを身につけたい方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。