近畿地方最古の芝居小屋、出石永楽館が3Dデジタルアーカイブとして甦る
兵庫県豊岡市に位置する出石永楽館が、文化財の保存と地域活性化を目指して、3Dデジタルアーカイブとしてバーチャル空間で公開されることになりました。この取り組みは、株式会社ホロラボの最新技術を用いたもので、来る2026年8月28日には『永楽館VR』として一般公開されます。これにより、訪れることができない方でもPCやスマートフォンを通じて、360度自由に館内を探索できるようになります。
出石永楽館の歴史
出石永楽館は、1901年に小幡家の11代目当主小幡久治郎氏により設立された近畿地方最古の芝居小屋です。館名は、出石城主・仙石氏の家紋「永楽銭」に由来し、歌舞伎や新派劇、活動写真など様々な上演が行われました。しかし、1964年には娯楽の多様化に伴い一旦閉館。その後、地域住民による保存活動により、2006年から2008年にかけて大規模な復原改修が行われ、再び文化の発信地として生まれ変わりました。
同館には廻り舞台や奈落、花道といった明治期の劇場設備がそのまま残されており、現在も片岡愛之助さんが出演する「永楽館歌舞伎」として地域の名物行事となっています。このような貴重な文化財を次世代に伝えるため、ホロラボは3Dデジタルアーカイブの製作に力を入れ、一体型のデータを記録しました。
先進技術によるデジタルアーカイブ
ホロラボは、地上型レーザースキャナRTC360を用いて高精度の点群データを取得し、さらにはミラーレス一眼カメラによって高解像度の画像も記録しました。データ構築には、ハンドヘルド型レーザースキャナXGRIDS Lixel K1も利用し、狭い場所の詳細までしっかりとスキャンされています。これにより、出石永楽館全体を一つの3Dデータとして忠実に再現することに成功しました。
フォトグラメトリ技術を駆使し、生成されたデータは従来のポリゴンメッシュとテクスチャで表現され、さらには3D Gaussian Splatting(3DGS)技術により、実際の目視に近い感覚で空間体験が可能となります。このような計測手法の組み合わせにより、従来の保存方法では伝えきれない空間の印象を、未来の世代へと残してゆくことが目指されています。
バーチャル体験と地域への展開
今回制作されたバーチャル空間は、「Arrival.Space」というプラットフォームを通じて公開されます。これにより、ユーザーは事前にアプリをインストールすることなく、URL一つで出石永楽館の内部を見学できるようになります。特に、リアルな舞台体験を仮想空間で再現することにより、地域のエンターテインメントをもっと手軽に楽しむことができるのです。
出石永楽館の館長、赤浦毅氏はこのプロジェクトに対し、多くの人々に出石の文化を知ってもらえることに期待を寄せています。彼は、このメタバース空間が、地域資産をより多くの方に体験してもらう貴重な機会になると考えています。ホロラボの藤原龍氏も、この空間に入念に取り組んできたことを語り、訪問した人々が魅力を体感し、この場所に実際に足を運んでほしいという願いを表明しました。
今後の展開に期待
出石永楽館の3Dデジタルアーカイブは、文化財の保護だけでなく観光や教育、地域文化の発信など、様々な可能性を秘めています。地域の資産をデジタル化し、他の地区にも展開することで、地域社会を豊かにするためのDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現していく目標が設定されています。
出石永楽館の未来がどのように切り開かれていくのか、今後の動向に注目が集まります。興味を持つ方は、ぜひバーチャル空間での体験を通じて、その魅力を感じていただければと思います。