都市の因習を描く新しいホラー作品
2026年8月4日に株式会社KADOKAWAから刊行される綿原芹の最新作『ぬひんさまの塔』。この作品は、著者が2025年に発表したデビュー作『うたかたの娘』で一躍注目を浴びたことを受けた、待望の2作目となっています。『うたかたの娘』がそのユニークなストーリーと新たな視点でホラーを作り上げたことから、次の作品に対する期待も高まっていました。
本作の舞台は、都市に建つタワーマンション。この場所に住むためには、一見不気味なルールに従わなければならないという設定は、都会の因習がどのように人々を束縛するのかを描いています。特に印象的なのは、「黒い風車をベランダに挿す」「低層の住人は高層の住人と関わってはいけない」といった明確な禁止事項です。これにより、タワマン内での暗黙の了解が新たな恐怖を生むのです。
新たなストーリーとキャラクター
物語の主人公は、30歳の独身女性、清那。彼女は憧れのタワマン生活を実現するために、ヴィンテージの低層階物件を購入しますが、そこから彼女の不幸が始まります。住民たちが律する奇妙なルールに従わざるを得ない彼女は、彼女自身の人生の選択を見直すことになります。タワマンは成功の象徴であると同時に、恐怖の巣窟であるという二面性をはらむことになるのです。
清那が直面する問題は、物件購入の際に果たして良い選択だったのかという疑問だけではありません。彼女がタワマンで過ごしていくうちに、夜中に響く下駄の音や、周囲の気配によって、次第に彼女は精神的な緊張感にさいなまれていきます。この作品は、ただのホラーに終わらず、人間関係の恐怖や心理的なドラマへと昇華されます。
奇妙なルールの恐怖
「来客禁止」「勝手なリフォーム禁止」「謎の神を祀った祠の管理」といった一見儀式的でありながら、実際には恐ろしいルールが清那にのしかかります。これらのルールは、彼女だけでなく、他の住民たちにも影響を及ぼしており、合意が必要な場面では皆が恐れを抱きます。高層住人たちとの交流を禁じられた清那は、彼らの秘密の世界にどうやって足を踏み入れるのか、そしてその過程で何が起こるのかが本作の大きな見どころです。
まとめ
『ぬひんさまの塔』は、ホラーの新しい形を模索する綿原芹の情熱が詰まった作品です。都市部に生きる私たちが直面する因習やルール、そしてそれがもたらす恐怖を精巧に描写しています。本作は、現代の暮らしの中に潜む怪異と恐怖をリアルに感じさせるだけでなく、読者自身の内面にも問いかけを行うでしょう。
この作品の特別公開された第1章「低層」は、KADOKAWA文芸WEBマガジン「カドブン」にて楽しむことができるので、ぜひ立ち寄ってみてください。新たなる恐怖体験があなたを待っています。