真夏の特別号『紙魚の手帖』vol.24の全貌
2025年8月12日に発売された『紙魚の手帖』vol.24は、SF特集号として毎年恒例の大注目の一冊です。
東京創元社が手掛けるこの文芸誌は、今年もSFファンを唸らせる内容が詰まっています。
充実のコンテンツ
特集号には第16回創元SF短編賞の受賞作が二作とも掲載され、選考委員である飛浩隆氏、宮澤伊織氏、長谷敏司氏が選評を寄せています。お二人の視点から見ることができる選評は、受賞作への理解を深める絶好の機会と言えるでしょう。
特に目を引くのは、受賞作の一つである雨露山鳥による「観覧車を育てた人」です。この作品は、ある人が観覧車を育てるという独自の設定から展開されるストーリーに、多くの読者が魅了されています。さらに、高谷再の作品「打席に立つのは」では、電化脳を持つ高校野球部という近未来の設定を背景に、入れ替わりをテーマにした新たな傑作が登場します。
核となるテーマが巧みに描かれ、SFファンにとって見逃せない作品です。
新たな才能の発見
「モーフの尻尾の代わりに」と題された作品では、愛する家族の本音を知りたいという依頼主のもとに魔女が現れ、彼女の思いを汲み取る過程が描かれています。感情調合師という設定が新鮮で、読み手に深い感動をもたらすことでしょう。
また、《天冥の標》シリーズで知られる小川一水は、本誌初登場の作品「星間戦艦ゴフルキルA8の驚嘆」を発表し、宇宙戦艦のミッションが「文明を滅ぼすこと」となった背後に秘められたドラマが展開されます。
座談会と解説記事
さらに、特集号では「SF入門のための10の名作短編」という座談会も開催されています。海外編と国内編に分かれたこの座談会には、目利きの書評家や翻訳家が参加し、SFの名作短編の魅力を語り合っています。どの作品を選ぶべきか、大いに参考になります。
加えて、東京創元社編集部による「英語圏SF・ファンタジー・ホラー文学賞の総まくり」もあり、これからのSFの動向を知るための有益な情報が満載です。
多彩な作品が楽しめる
また、短編に加え、現役の人気動画配信者によるSFシリーズも掲載。視聴者のコメントが絡む形で進行し、現代のSFが育む新たな表現方法を強く感じさせます。バラエティに富んだ作品群を通じ、心を揺さぶられること間違いありません。
目を引くビジュアル
本誌の装画はカシワイ氏によるもので、視覚としての魅力も忘れてはいけません。まさに「SFの夏」を感じさせる美しい装丁が目を引きます。
このように、『紙魚の手帖』vol.24は今年のSF文芸を豊かに彩る特集号です。定期購読者にとって見逃せない内容となっており、SFの世界に一層の探求心を駆り立てることでしょう。この機会にぜひとも手に取っていただきたい一冊です。