デジタル主権戦争とその影響
2023年8月、米国政府が国際刑事裁判所(ICC)赤根智子所長を制裁対象に指定したことで、彼女がオランダ・ハーグで暮らす日常に深刻な影響が出る事態が発生した。赤根所長は「少なくともクレジットカードは使えなくなっています」との声明を発表、この一言が世界の金融システムの脆弱性を浮き彫りにした。
この出来事は、米国の外交政策が一個人の生活にまで影響を及ぼす時代に突入したことを示しています。なぜ一国の制裁によって、国外に暮らす日本人が日常的な決済手段を失うことになったのか。その理由は、世界の金融・決済・通信インフラが、一部の国家や企業によって掌握されているからです。これにより、国境を越えた人々や組織の行動が無視され、操作されうる現実が存在しています。
本書『[デジタル主権]戦争』の内容
2023年9月1日に発行される『[デジタル主権]戦争』は、この複雑な構造を詳細に解き明かすノンフィクションです。著者の昼間たかし氏は、日本のメディアがまだ伝えていない「デジタル主権戦争」という概念を取り扱い、日本が既にこの戦争で敗北していると指摘しています。これまで私たちがどのように日常生活の多くをアマゾン、グーグル、マイクロソフトに依存しているのかを探ります。
実際、現在の日本においては、中央省庁の業務システムやマイナンバーの管理、自衛隊の情報などがアメリカ企業のサーバーに依存しているという状況が続いています。さらに、東京都の行政もグーグルとの協定の下に組み込まれています。この現象は、単なるITの話ではなく、国家主権を静かに蝕む力の存在を示しています。
制裁の影響を受ける日本
本書では、現職のアメリカ大統領のアカウントが一民間企業により停止された事例や、国際刑事裁判所の裁判官が制裁リストに追加されたことで、クレジットカードを止められたり、購入済みの電子書籍を消去されたりする様子が描かれています。武力による侵略ではなく、経済と情報制御によって私たちの日常が脅かされています。このような状況において、あなたのカードやアカウントは同じネットワークの上に存在していることを認識しなければなりません。
著者は、アメリカ、イギリス、ヨーロッパ各国、さらにはロシアの政府関係者や研究者と接触を重ね、現場の証言を通じてこの見えない戦争の全貌に迫っていきます。なぜ、一民間企業がアメリカ大統領の声を黙らせることができたのか、そのプロセスも詳しく探求されています。また、クレジットカード会社がどのように「世界の検閲官」となったのか、SNSや検索エンジン、AIがどのように私たちの思考を選別しているのかにも焦点が当てられます。
日本の現状と未来
加えて、中国やロシアがインターネット上に壁を築く理由や、EUが巨額の罰金でアメリカを牽制しようとする背景、さらには米欧中露が繰り広げる支配権の争いについても述べられています。ここで争われているのは、領土や資源ではなく、私たちの思考そのものです。
この本が今まさに繰り広げられている「デジタル主権戦争」の最前線を日本の読者に伝えることを目指しています。日本人は、この戦争が進行していることにまだ気づいていないのです。現在の状況に目を向け、私たちの日常がどれほど危機的な状況にあるのかを認識する必要があります。これから、どのようにこの問題に取り組んでいくのかが問われています。