心を癒す“推し活”:九州大学名誉教授が語る心理的効果
最近、多くの人々が熱心に取り組む“推し活”。この活動が心をどう癒すのか、その心理的意義を九州大学名誉教授の増田健太郎氏に伺いました。彼の見解に耳を傾け、その奥深い理由に迫ります。
推し活とは?
推し活とは、自分が応援する人物やキャラクターを中心にした活動を指します。ファンが自らの想いを形にする“推し広告”を通じて、その存在を支えることが主な内容です。増田教授によれば、現代における推し活は、ただの趣味に留まらず、自己実現の代理体験としての側面を持つとのことです。
自己実現の代理体験
増田教授は、推し活が人間の基本的な欲求、特に承認欲求や自己実現の欲求に深く関連していることを指摘します。かつては、アイドルのファン活動としてレコードやCDを購入し、ファンクラブに加入することが一般的でしたが、現在では推し広告という新たな形式が登場しました。このような広告を通じて多くの人と共感を得ることで、自らの存在が認められたと感じる満足感を得ることができるのです。
投影の心理
増田教授は、人が誰かを“推す”理由として、無意識のうちに自分の理想像を他者に投影する心理を挙げました。推しは理想を具現化した存在であり、そこに自分の“なりたい姿”を見出すことで、より一層その存在を応援したくなるのです。そして、この感情を推し広告という形で表現することで、自己の感情を強めていくことができます。
安全な自己表現の場
特にSNSでは、外部からの否定的な反応に傷つくことも少なくありませんが、推し広告は興味を持った人々が見るため、比較的ポジティブなフィードバックが得られる場となります。増田教授は、この環境が安心して自分を表現できる貴重な場であると強調しました。
仲間とのつながり
推し活を通じて、同じ推しを応援する仲間と出会い、一体感を感じることも重要です。野球チームのファンなど、同じ対象を応援することで生まれる連帯感は、職場や学校では得られにくい特別なものです。一方で、より素晴らしい広告を作りたいという競争心も刺激され、自身の表現力を高めるきっかけになります。
ストレスケアとしての推し活
現代は忙しさから自己実現が難しい時代でもありますが、推し活はそのストレスを和らげる役割を果たしています。推しの存在が希望を与え、応援の結果として自己の努力が認められると、人々は生きがいやモチベーションを感じることができるのです。
健全な推し活のために
最後に、増田教授は推し活を楽しむ際の注意点についても触れました。「経済力に見合った範囲で、無理をせずに楽しむことが大切です」との言葉通り、長く続けられるような楽しみ方が理想だとされています。
まとめ
推し活は単なる趣味を超え、現代人の心を支える新しい文化を形成しています。その意義は、自己表現やコミュニティ形成に留まらず、心の豊かさを育む大切な活動であることを増田教授の言葉から学ぶことができました。今後も推し活の可能性と心への効果に注目していきたいと思います。